
生検でグレードグループ1(GG1)に分類された前立腺がん患者は、転移リスクが低いため、治療はせずに経過観察のみでよいとされることが多い。しかし新たな研究で、GG1前立腺がん患者のおよそ6人に1人は中〜高リスクのがんであることが示された。米ワイル・コーネル・メディスン泌尿器科・人口健康科学科のBashir Al Hussein氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に7月31日掲載された。
前立腺生検の結果は、非がん性から高リスクで治療が必要ながんまでさまざまである。現在、生検でGG1と判定された場合、治療は行わずに定期的に腫瘍の評価を行って進行の兆候がないか確認する「積極的監視」の方法が取られることが多い。Al Hussein氏らによると、積極的な監視では、前立腺で生成されるがん関連タンパク質である前立腺特異抗原(PSA)値をモニターするための血液検査、生検、MRI検査などが行われる可能性があるという。しかし同氏らは、前立腺生検は前立腺全体の組織を採取するわけではないため、1回の生検では悪性のがん細胞を見逃す可能性もあると強調する。
今回の研究でAl Hussein氏らは、米国のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)データを用いた人口ベースのコホート研究を実施し、リスクカテゴリー別にGG1前立腺がん特異的死亡率や手術時の病理所見を評価した。対象は、2010年から2020年にかけて、局所限局性前立腺がんと診断された29万9,746人(年齢中央値64歳)で、そのうちの11万7,162人が生検でGG1と判定されていた。
対象者のうち、9%(1万440人)がfavorableな中間リスクGG1、3%(3,145人)がunfavorableな中間リスクGG1、4%(4,539人)が高リスクGG1に分類された。これは、GG1に分類された患者の約6人に1人が実際には中〜高リスクのがんに該当し、放射線治療や前立腺の摘出が推奨されるケースだったことを意味している。また、高リスクGG1で前立腺全摘除術を受けた1,455人の患者のうち、867人(60%)に悪性病理所見が認められた。
前立腺がん特異的死亡率は、unfavorableな中間リスクGG1群で2.4%、高リスクGG1群で4.7%であり、GG2以上のfavorableな中間リスク群およびunfavorableな中間リスク群の死亡率(それぞれ、2.1%と4.0%)と同程度であることが示された。前立腺がん特異的死亡リスクは、低リスクのGG1群に比べて、favorableな中間リスクGG1群で1.60倍、unfavorableな中間リスクGG1群で2.10倍、高リスクGG1群で3.58倍であった。
この新たな知見は、一部の臨床医がGG1前立腺がんを「がん」に分類するのを完全にやめるべきだと議論している時期に明らかになったという。論文の共著者である米ケース・ウェスタン・リザーブ大学泌尿器科准教授のJonathan Shoag氏は、「低悪性度と低リスクは同じと誤解されることが多いが、われわれは今回、両者が異なることを明確に示した。GG1の名称を変更しようとする試みは見当違いだ。なぜなら、生検でGG1前立腺がんと診断された患者の中には、治療を受けなければ、生涯にわたってがんによる痛みや苦しみが生じるリスクが高い患者も多いからだ」と述べている。
Shoag氏によると、GG1前立腺がんは全て低リスクだとする考え方は、主に、摘出された前立腺組織サンプルの検査を根拠にしているという。しかし個々の患者にとって、摘出した組織からの情報に基づく判断と、たった1回の生検結果に基づく判断は同じではない。同氏は、「臨床医として、われわれは個々の患者と生検結果が示す状況に基づいて判断を下さなければならない」と述べている。
Al Hussein氏もこれに同意を示し、「GG1前立腺がんであっても患者が臨床的に不良な特徴を示す場合、予後について患者に知らせるためのより良い方法を見つける必要がある。医師には、患者を教育し、診断内容を理解して最善の治療法を決定するために必要な情報を患者に提供するとともに、実際にリスクが低い人に対する積極的監視を提唱し続ける責任がある」と話している。(HealthDay News 2025年8月1日)