「心臓年齢」を算出するための新たなツールを用いた研究から、多くの米国人の心臓の生理学的年齢は暦年齢よりも高く、特に男性では女性よりも心臓の老化が進んでいることが明らかになった。ツールを開発し、研究結果を報告した米ノースウェスタン大学循環器疫学教授のSadiya Khan氏らは、人々にそれぞれの心臓年齢を伝えることで、より健康的な生活習慣や治療に対する意識向上につながる可能性があるとの見方を示している。詳細は、「JAMA Cardiology」に7月30日掲載された。 Khan氏は、「心筋梗塞や脳卒中、心不全のリスクを下げる薬による治療を受けるべき人の多くが、実際にはそのような治療を受けていない。この新たな心臓年齢の計算ツールが、予防についての議論を促し、最終的にはあらゆる人の健康の向上に役立つことを期待している」と述べている。 Khan氏らが開発した心臓年齢の計算ツールは無料で公開されており、オンラインで利用可能だ。同氏らによると、このツールは米国心臓協会(AHA)のPREVENT計算式に基づいている。PREVENT計算式は、患者の心血管リスクをパーセンテージで表すもので、医師はこの計算式による結果を、例えば、「あなたの心血管プロフィールでは、10人中8人が今後10年間に心血管イベントを起こす可能性がある」という具合に説明する。しかし、Khan氏らは、患者にとっては心臓の状態を「年齢」で表す方が理解しやすいのではないかと考えた。 Khan氏らは今回、2011~2020年に米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した米国民を代表する30〜79歳の成人1万4,140人のデータにこのツールを適用した。分析時点で心臓病の既往歴がある参加者はいなかった。 分析の結果、ほとんどの参加者において、暦年齢よりも心臓年齢の方が高いことが示された。例えば、全体の参加者を見た場合、女性の暦年齢の平均は51.3歳であったのに対し、心臓年齢の平均は55.4歳だった。また、男性の結果はそれ以上に悪く、暦年齢の平均は49.7歳であったのに対し、心臓年齢の平均は56.7歳と大幅に高かった。 Khan氏らは特定の人口学的要因も心臓年齢に関係していることを指摘している。例えば、男性で学歴が高卒以下の人の約3分の1(32.5%)は、暦年齢と比べて心臓年齢が10歳以上高いことが示された。また、男女ともに黒人やヒスパニック系の人では暦年齢を心臓年齢が上回る傾向にあることも判明した。 ノースウェスタン大学のニュースリリースによると、「黒人男性の心臓年齢は実年齢より8.5歳、ヒスパニック系男性では7.9歳、アジア系男性では6.7歳、非ヒスパニック系白人男性では6.4歳高いことが示された。また、女性に関しては黒人女性で6.2歳、ヒスパニック系女性で4.8歳、非ヒスパニック系白人女性で3.7歳、アジア系女性で2.8歳、それぞれ心臓年齢が実年齢よりも高いという結果が得られた」という。 このような健康格差を縮小させるには「予防」が鍵になるとKhan氏は言う。同氏は、「心臓病のリスクについて医師と患者が効果的な話し合いの機会を持ち、心筋梗塞や脳卒中、心不全などを防ぐための治療法に関する適切な情報提供につなげる上で、このツールが役立つことを願っている」と述べ、新たなツールが人々の行動変容のきっかけになることに期待を示している。 さらにKhan氏は、「重要なのは、心臓年齢が分かった場合、われわれのツールボックスには、心臓の老化を遅らせるための有効な選択肢が多くそろっていることだ。特に心臓病のリスクをあまり意識しない若い年代にとっては、このことはより重要であるかもしれない」と強調している。(HealthDay News 2025年7月31日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/how-old-is-your-heart-it-could-be-aging-faster-than-you-are Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock