気候変動による日々の気温上昇を受けて米カリフォルニア州の救急外来(ED)では、かつてないほどの混雑が予想されることが、新たな研究で示唆された。この研究では、同州では気候変動により主に寒冷関連の死者数が減少するという明るい側面も確認されたものの、暑熱関連の気候変動は怪我や慢性的な健康問題の悪化を招くため、EDを受診する患者が増え、医療システムへの負担が増加することが予想されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)公衆衛生学分野のCarlos Gould氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月30日掲載された。 Gould氏は、「暑さは死に至るほどではないにしても健康に害を及ぼす可能性がある。気温の上昇は、一貫してED受診の増加と関連しているため、死亡率のみを考慮した研究や政策では大きな負担を見落とすことになる」と話している。 Gould氏らは米スタンフォード大学の研究者らと協力し、2006年から2017年までのカリフォルニア州の死亡数、ED受診数、入院数、毎日の気温に関するデータを調べ、気候変動による健康への影響を2050年まで予測した。その結果、カリフォルニア州では、気候変動により、2050年までに主に寒冷関連の死者数が合計5万3,500人減る(0.43%の減少)と推定された。この減少は、年間推定300億ドル(1ドル147円換算で4兆4,100億円)の節約につながる可能性があるという。その一方で、同州では気候変動によるED受診が合計で150万件増加(0.46%の増加)し、医療費が年間5200万ドル(約76億4400万円)増加すると推定された。 ED受診の原因のうち、暑熱と関連する症状として最も多いのは熱中症だが、怪我、精神疾患、中毒など、暑さに関連した他の出来事や症状による受診も少なくない。論文の共著者であるUCSD公衆衛生学分野のAlexandra Heaney氏は、「われわれは、熱波による健康への影響として死亡についてのみ注目しがちだが、この研究は、中毒、内分泌疾患、怪我、消化器系の問題など、暑熱の影響を受けやすいと一般には考えられていない多くのことが、実際には影響を受けていることを示している」と指摘する。その上で同氏は、「現在、そして将来における熱波について考える際には、あらゆる健康被害に焦点を当てる必要がある」と付け加えている。 研究グループは、気候変動の影響は特定の人口層に特に大きな影響をもたらすと話す。Gould氏は、「年齢は気温による健康リスクを左右する上で重要な役割を果たす。高齢者は特に寒さに弱く、逆に、若者や子どもは暑さの影響を受けやすい」と指摘する。 論文の上席著者でスタンフォード大学環境社会科学分野教授のMarshall Burke氏は、「気候変動によりカリフォルニア州で予想される医療負担を軽減するには、さまざまな関係者の協力が必要だ」と話す。同氏は、「誰が、どのように、そしてどのような気温で影響を受けるのかを把握することは、健康を守るための適切な対応を計画する上で非常に重要だ。これは気候変動の有無に関わらず当てはまることだが、地球温暖化によりその重要性はいっそう高まり、誰が何にさらされるかも変わってくる」と述べ、病院、保険会社、公衆衛生機関が協力して、今後数年間の気温上昇に備え、最もリスクの高い集団に向けたメッセージを準備する必要があると話している。(HealthDay News 2025年8月4日) https://www.healthday.com/health-news/first-aid-and-emergencies/climate-change-will-send-many-more-californians-to-the-er Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock