インフルエンザに罹患した小児に抗ウイルス薬のタミフル(一般名オセルタミビル)を投与すると、発作や精神症状、幻覚などを引き起こす可能性があるという長年の懸念が、新たな研究により払拭された。タミフルは、インフルエンザを未治療で放置した場合と比べて、実際に小児にそのような神経・精神症状が生じるリスクを半分程度に減らすことが示されたという。米ヴァンダービルト大学モンロー・カレル・ジュニア小児病院のJames Antoon氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に8月4日掲載された。 Antoon氏は、「われわれの研究結果は、多くの小児科医が長らく疑っていたこと、つまり、インフルエンザの治療薬ではなく、インフルエンザそのものが神経・精神症状と関連していることを明らかにした。実際、オセルタミビルによる治療は、神経・精神症状を引き起こすのではなく、むしろ予防する可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。 タミフルは、小児においても成人においてもインフルエンザの治療で最も多く処方される抗ウイルス薬であり、適切なタイミングで使用すれば、インフルエンザの症状を緩和し、症状の持続期間を短縮し、ウイルスのさらなる拡散を防ぐことができると研究グループは説明する。2006年、米食品医薬品局(FDA)は、主に日本からタミフルを服用した小児における自傷行為やせん妄の報告を受け取り始めた。これらの報告に基づき、FDAはタミフルの添付文書にこの件に関する警告を追加したものの、同薬は小児に対しても基本的には安全であるとの見解を示している。それでも、依然としてタミフルの潜在的なリスクを懸念する声は残っている。 Antoon氏らは、インフルエンザの2016/2017シーズンから2019/2020シーズンの間に米テネシー州のメディケイドに加入していた5〜17歳の小児69万2,295人(年齢中央値11歳、女性50.3%)のデータを分析した。そのうちの12万9,134人はインフルエンザに罹患し、66.7%にタミフルが処方されていた。 解析の結果、タミフルを使用しなかった場合と比べて、タミフルによる治療中および治療後の期間においては、精神・神経症状の発生リスクが50%程度低下しており、発生率比は、治療中で0.53(95%信頼区間0.33〜0.88)、治療後で0.42(同0.24〜0.74)と推定された。このリスク低下は主に神経症状の減少によるもので(発生率比0.45、95%信頼区間0.25〜0.82)、精神症状に関しては有意な差が認められなかった(同0.80、0.34〜1.88)。 Antoon氏は、「これら3つの知見を総合すると、タミフルは神経・精神症状の発生リスクを高めるという説を支持するものではない。問題を引き起こすのはインフルエンザ自体なのだ」と結論付けている。 研究グループは、この研究結果が、タミフルの安全性と小児がインフルエンザを乗り切る上での有用性について、保護者や医師に安心感を与えることを期待している。論文の上席著者であるヴァンダービルト大学医療センターのCarlos Grijalva氏は、「タミフルは、特に臨床症状の初期段階で使用した場合には安全かつ効果的だ」とニュースリリースで述べている。(HealthDay News 2025年8月7日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/tamiflu-safe-for-children-study-concludes Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock