毎日の散歩の距離を増やして歩くペースを上げると、高血圧に関連する心臓病や脳卒中のリスクを減らすのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。1日の歩数が2,300歩程度の場合と比較して、1,000歩増えるごとに心筋梗塞、心不全、脳卒中のリスクが低下することが明らかになったという。シドニー大学(オーストラリア)マッケンジー・ウェアラブル研究ハブ所長のEmmanuel Stamatakis氏らによるこの研究の詳細は、「European Journal of Preventive Cardiology」に8月6日掲載された。Stamatakis氏は、「これらの研究結果は、たとえ一般に推奨されている目標である1日1万歩を下回る運動量であっても、身体活動を行うことが有益であることを裏付けている」と欧州心臓病学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。 この研究でStamatakis氏らは、高血圧を有するUKバイオバンク参加者3万6,192人(平均年齢64歳、男性48%)を対象に、1日の歩数や歩行強度と心血管疾患による死亡および、心不全・心筋梗塞・脳卒中(以下、主要心血管イベント〔MACE〕)との関連を検討した。対象としたUKバイオバンク参加者は、7日間にわたって加速度計を装着し、1日の歩数と歩行強度を測定していた。 平均追跡期間は7.8年であり、その間に1,935件のMACEが発生していた。解析からは、基準とした1日の歩数(2,344歩)を超える歩数はMACEリスクの低下と関連することが示された。具体的には、1日の歩数が1,000歩増えるごとにMACEリスクは17.1%(95%信頼区間10.2〜23.2)、心不全リスクは22.4%(同11.0〜31.7)、心筋梗塞リスクは9.3%(同−2.8〜19.6)、脳卒中リスクは24.5%(同5.3〜39.0)低下していた。ピーク歩行強度(1日の中で最も速く歩いた30分間での平均歩行速度〔歩数/分〕)の中央値76.6歩/分でのMACEのハザード比は0.70(95%信頼区間0.63〜0.79)であり、基準値(38.3歩/分)より速く歩くほどMACEリスクは低くなっていた。 さらに、高血圧のないUKバイオバンク参加者3万7,350人を対象に、歩数が1,000歩増えるごとにMACEおよびMACEの構成要素である心不全・心筋梗塞・脳卒中のリスクがどの程度変化するかが検討された。その結果、MACEリスクは20.2%、心不全リスクは23.2%、心筋梗塞リスクは17.9%、脳卒中リスクは24.6%低下することが示された。 こうした結果を受けてStamatakis氏は、「これらの結果から言えるのは、高血圧の人は、より速いペースでより長く歩くほど、将来、深刻な心血管疾患を発症するリスクが低くなるということだ」と述べている。 さらにStamatakis氏は、「本研究から、1日1万歩未満であっても、心臓の健康に有益な達成可能で測定可能な目標値が示された。高血圧患者に対する今後のウォーキングに関する推奨では、より高い歩行強度の推奨も検討される可能性がある」と話している。(HealthDay News 2025年8月7日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/longer-quicker-walks-protect-heart-health Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock