TAR-200と呼ばれる、薬剤を封入した小さなプレッツェル型のインプラントデバイスにより、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)治療に反応しない高リスク膀胱がん患者の5人中4人でがんが消失したとする第2相臨床試験の結果が報告された。米南カリフォルニア大学ケック医学校泌尿器腫瘍科長のSiamak Daneshmand氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に7月30日掲載された。 Daneshmand氏は、「これまで、治療抵抗性を示す膀胱がんに対する治療選択肢は非常に限られていた。この新しい治療法は、一般的な膀胱がんに対する治療法としてこれまでに報告されたものの中では最も効果が高い」と述べている。 従来の治療では膀胱内に液体のゲムシタビンを注入するが、薬剤は数時間で排泄されてしまうため、がんに対する効果は限定的であった。一方、ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発したTAR-200は、プレッツェル型の小型デバイスにゲムシタビンを封入したもので、カテーテルを通して膀胱内に挿入される。TAR-200は膀胱内で、1回の治療サイクルである3週間にわたりゲムシタビンをゆっくりと持続的に放出する。「この研究の背景にある理屈は、薬剤が膀胱内にとどまる時間が長いほど深く浸透し、より多くのがんを破壊できるというものだ」とDaneshmand氏は説明している。 今回の臨床試験は、BCG不応性の筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者85人を対象に実施された。NMIBCは膀胱がんの中で最も多いタイプのがんである。対象患者はいずれも再発や他の部位への転移の可能性が高いため、高リスクと診断されていた。患者のうち、BCG不応性の上皮内がん(CIS)を有する群(乳頭状腫瘍の有無は問わない)は、C1群(TAR-200+セトレリマブ〔抗PD-1モノクローナル抗体〕、53人)、C2群(TAR-200単独、85人)、C3群(セトレリマブ単独、28人)に、CISを伴わず乳頭状腫瘍のみを有する患者はC4群(TAR-200単独、52人)に割り付けられ、それぞれの治療を受けた。治療期間は、TAR-200が24カ月、セトレリマブが18カ月であった。主要評価項目は、C1~C3群では完全奏効率、C4群では無病生存率とされた。 その結果、C2群では、完全奏効率は82.4%(70/85人)、治療反応期間の中央値は25.8カ月であることが明らかになった。C1群とC3群の完全奏効率は67.9%と46.4%であった。また、C4群での6・9・12カ月時点での無病生存率はそれぞれ、85.3%、81.1%。70.2%であった。 これらの結果を踏まえてDaneshmand氏は、「化学療法薬を数時間ではなく数週間かけてゆっくりと放出する方が、はるかに効果的なアプローチのようだ」と述べている。 米食品医薬品局(FDA)はTAR-200に新医薬品申請の優先審査を認可した。これはFDAが、この機器の審査を迅速化することを意味すると研究グループは述べている。なお、本臨床試験は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社傘下のヤンセン・リサーチ&ディベロップメント社の資金提供を受けた。(HealthDay News 2025年8月18日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/device-eliminates-bladder-cancers-in-4-of-5-cases Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: The TAR-200 device for treating bladder cancer. Johnson & Johnson