オメガ3系多価不飽和脂肪酸(以下、オメガ3脂肪酸)には、心臓病、認知症、一部のがんのリスク低下など、健康に対するさまざまな潜在的効果のあることが示されているが、小児の近視の発症を防ぐのにも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示された。香港中文大学(中国)眼科学分野教授のJason Yam氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Ophthalmology」に8月19日掲載された。 近視は、目の形状により、入射光線が目の奥にある光を感じる視細胞の壁である網膜に到達できないときに発生する。近視の罹患率は世界的に上昇傾向にあり、予防戦略を策定するためには食事などの修正可能なリスク因子を特定する必要がある。これまでの動物実験では、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸が、脈絡膜の血流と強膜の低酸素状態を調節することで近視の進行を抑制する可能性のあることが示唆されている。脈絡膜は網膜の外側の血管が豊富な膜のことであり、強膜は眼球の白目の部分のこと。オメガ3脂肪酸は、主に油の多い魚に含まれているが、一部の種子やナッツにも含まれている。 Yam氏らは今回、香港で行われたより大規模な眼科研究からランダムに選ばれた6〜8歳の小児1,005人(平均年齢7.64歳、男児52.1%)を対象に、食事からのオメガ3脂肪酸摂取やその他の食事因子と近視との関連を検討した。対象児の食事内容を妥当性が確認されている食事摂取頻度調査法を用いて評価し、オメガ3脂肪酸の摂取量に基づき対象児を4群に分類した。オートレフラクトメータで測定した調節麻痺下の等価球面度数(SE)と、IOLマスターを用いて測定した眼軸長(AL)により、近視の有無や程度を評価した。ALは黒目の表面から網膜までの長さであり、長くなり過ぎると近視、短くなり過ぎると遠視の状態になる。一方、SEは目の屈折状態を数値で表す指標であり、近視だとマイナスの値、遠視だとプラスの値となる。 対象児のうち276人(27.5%)が近視であった。解析の結果、4群の中でALが最も長いのはオメガ3脂肪酸の摂取量が最も少ない群での23.29mmであり、年齢や性別、BMI、近距離での作業時間、屋外で過ごす時間、親の近視歴を調整後も、最も多い群(23.08mm)との差は有意であった(P=0.01)。また、SEについても同様の傾向が見られ、最も少ない群で−0.13D(ディオプター)、最も多い群で0.23Dであった(P=0.01)。一方、バター、パーム油、赤肉などに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べてALが有意に長く(23.30mm対23.13mm、P=0.05)、飽和脂肪酸が近視リスクを高める可能性のあることも示唆された。その他の栄養素と近視の間に関連は認められなかった。 Yam氏は、「これらの結果は、オメガ3脂肪酸が近視の発症を防ぐ潜在的な食事因子であることを浮き彫りにしている」と結論付けている。同氏らは、オメガ3脂肪酸が目の血流を増加させ、健康な目の発達を促進することで近視を防ぐのではないかと推測している。(HealthDay News 2025年8月21日) https://www.healthday.com/health-news/eye-care/omega-3s-might-protect-against-nearsightedness Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: CHIOSEA_ION/Adobe Stock