年齢を重ねても脳の健康を維持したい人は、定期的に地域や近所でボランティア活動を行うか、友人や家族を手助けすると良いようだ。そうした他者を手助けする活動を定期的に行っている人では、その活動が公式か非公式かにかかわらず、加齢に伴う認知機能の低下速度が緩やかであることが、新たな研究で示された。米テキサス大学(UT)オースティン校人間発達・家族科学分野のSae Hwang Han氏らによるこの研究の詳細は、「Social Science & Medicine」10月号に掲載された。Han氏は、「組織的なものであれ個人的なものであれ、日常的に他者を手助けすることは認知機能に永続的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 この研究では、1998年から2020年の間にU.S. Health and Retirement Study(全米健康と退職研究)に参加した米国の51歳以上の成人3万1,303人のデータを用いて、他者を手助けする役割の変化やその活動時間の増減が認知機能にどのように影響するのかを検討した。他者を手助けする役割は、公式なボランティア活動と、家族や友人を手助けする個人的な援助に分けて検討した。個人的な援助の例は、友人の医療機関受診の予約を取ることや、ベビーシッターをすることなどである。 その結果、公式なボランティア活動か個人的な援助かを問わず、他者を助ける活動を始めた人では、そうした活動をしていない人に比べて認知機能が高く、加齢に伴う認知機能の低下がより緩やかであることが明らかになった。また、他者を手助けする活動を継続的に行うことは認知機能に累積的なベネフィットをもたらし、時間が経つほどその効果が大きくなることも示された。さらに、認知機能へのベネフィットを得るためには、そうした活動を行う時間が1週間に2~4時間程度と中程度の活動量で十分であることも示された。 Han氏は、「私にとって印象的だったのは、他者を手助けすることでもたらされる認知機能へのメリットが短期的なものではなく、そうした活動を継続することで経時的に蓄積されるという点だ。こうしたメリットは、公式なボランティア活動と非公式な援助の両方で認められた」とUTのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「それだけでなく、わずか2~4時間程度の関与でも、一貫して大きなベネフィットにつながっていた」と付け加えている。 Han氏はまた、「個人的な手助けは非公式であり社会的に認知されないため、健康に対する効果が小さいと思われがちだ。しかし、そうした行為でも公式なボランティア活動に匹敵する認知機能の向上が見られたことは、嬉しい驚きだった」と語っている。 研究グループは、毎年のように他者を手助けする活動を行うことが習慣になっている人の間では、より大きなベネフィットを期待できるのではないかとみている。Han氏は、「一方で、他者を手助けする活動を完全にやめてしまうことは、認知機能の低下と関連していることが示された。これは、高齢者が可能な限り何らかの形でそうした活動に関わり続けることの大切さを示しており、そのためには適切なサポートや配慮が必要なことを示している」と述べている。 研究グループは、他者を手助けする活動によりもたらされるベネフィットは、社会的つながりの強化か、あるいは毎日の生活の中で抱えるストレスの軽減によりもたらされる可能性が高いと見ている。こうした活動は、時間の経過とともに人の認知機能を蝕むとされる孤立感や孤独感を軽減することができる可能性があるという。(HealthDay News 2025年8月19日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/volunteering-slows-brain-aging Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock