進行がん患者の中には、残された日々をできるだけ快適に過ごしたいと望む人は少なくない。しかし、医師はその願いに十分に耳を傾けていないことが、新たな研究で示唆された。そのような望みを持つ進行がん患者の多くが、痛みを和らげることよりも延命を重視した治療を受けていることが明らかになったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の腫瘍内科医であるManan Shah氏らによるこの研究の詳細は、「Cancer」に8月25日掲載された。Shah氏は、「患者が望む治療と患者が実際に受けていると思っている治療との間にずれがあるのは大きな問題だ」とUCLAのニュースリリースの中で述べている。 がん治療は一般的に、延命と生活の質(QOL)向上の両方を目指して行われるが、これらの目標は時に対立することがあるとShah氏らは説明している。同氏は、「進行がんの治療では、患者ができるだけ長く、できるだけ良好な状態で生きられるようにすることが治療目標になる。しかし、延命と快適に過ごせる状態の維持という目標が互いに対立し始めると、患者と腫瘍内科医は難しい選択を迫られることがある」と言う。 患者が自分の治療についてどのように感じているかを調べるため、Shah氏らは重篤な疾患があり、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)を必要とする1,099人の患者を対象に調査を実施した。このうち21%(231人)は進行がん患者、残りはその他の重篤な疾患を抱える患者だった。 「快適さを重視した治療」を希望していた割合は、進行がん患者で49%、その他の重篤な疾患の患者では48%、また、24カ月間の死亡率は、それぞれ16%と13%であり、いずれも両群間に有意な差はなかった。しかし、「快適さを重視した治療」を希望していたにもかかわらず延命治療を受けた患者の割合は、がん患者で37%、その他の疾患の患者では19%であり、がん患者で有意に多かった。快適さを重視した治療を希望したがん患者のうち、希望に反して延命治療を受けた患者と希望通りの治療を受けた患者の24カ月間の死亡率はそれぞれ24%と15%であり、両者の差は統計学的に有意ではなかった。 Shah氏らは、「快適さを優先することを望んでいる進行がん患者のかなりの割合が、そのような希望に反する治療を受けていると報告していたことが明らかになった」と述べている。さらにShah氏は、「医師は、治療の目標について患者と率直に話し合う機会を持つ必要がある。そうした話し合いを通じて、提供している治療の目的をわかりやすく説明し、患者の希望と治療内容の間に存在する不一致、あるいは認識の上での不一致の解消に努めることが必要だ」と指摘している。 こうした問題の要因は、患者と率直に話し合わず、曖昧な態度をとる医師の側にあるのではないかとShah氏らは指摘している。同氏らは、「4,074人の腫瘍内科医を対象とした調査では、見た目は健康そうで症状もない、あるいは全ての治療選択肢をまだ試していない進行がん患者と治療目標について話し合いを始めることに抵抗があると回答した医師がほとんどであることが示されていた。しかし、大多数の患者は、医師に治療目標についての話し合いを切り出してほしいと感じていることが複数の研究で示されている。そのため、腫瘍内科医が治療目標の話し合いに消極的であることは気がかりである」と記している。 その上で、Shah氏らは、「結局のところ、本研究結果は、進行がんでは患者との間で治療の目標や意図についてよりタイムリーで効果的なコミュニケーションが必要であることを示している」と結論付けている。(HealthDay News 2025年8月26日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/many-cancer-patients-say-doctors-arent-honoring-their-treatment-desires Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Sutthiphong/Pixel-Shot/Adobe Stock