定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見に有効であるだけでなく、女性の心臓病リスクを正確に予測するのにも役立つ可能性があるようだ。マンモグラフィの画像から心血管疾患(CVD)リスクを予測する人工知能(AI)モデルの予測性能は、米国心臓協会(AHA)や他の専門家グループが開発したCVDイベントリスク予測方程式(Predicting Risk of Cardiovascular Disease Events;PREVENT)の予測性能と同等であることが、新たな研究で示された。ジョージ国際保健研究所(オーストラリア)で心血管プログラムのグローバルディレクターを務めているClare Arnott氏らによるこの研究結果は、「Heart」に9月16日掲載された。 Arnott氏は、「多くの女性は、心血管リスクが高まる人生の段階ですでにマンモグラフィ検査を受けている。心血管リスクのスクリーニングとマンモグラフィを用いた乳がん検診を統合することで、乳がんとCVDという二つの主要な疾患と死亡の原因を特定し、予防できる可能性が高まる」と述べている。 研究グループによると、CVDは世界中の女性の死因として最も多く、CVDによる死亡は全死亡数の約3分の1に当たる年間約900万人を占めるという。マンモグラフィの画像に映し出される乳房動脈石灰化や乳腺濃度は、心血管リスクと関連することが知られている。このことを踏まえてArnott氏らは、日常的に撮影されるマンモグラフィ画像から心血管リスクを予測する深層学習モデルを開発した。このAIモデルは、女性のマンモグラフィ画像と年齢のみを用いて心血管リスクを評価するもので、医師が血圧やコレステロール値、血糖値などの情報を追加で入力する必要はない。 本研究では、オーストラリアのビクトリア州に住む4万9,196人の女性の定期的なマンモグラフィ検査の画像を用いて、このAIモデルの予測性能を従来のリスク予測モデル(ニュージーランドのPREDICTツール、AHAのPREVENT方程式など)と比較した。 中央値8.8年間の追跡期間中に、3,392人の女性に心筋梗塞や脳卒中、心不全、冠動脈疾患などの心血管イベントが発生していた。解析の結果、マンモグラフィ画像と年齢のみを用いたAIモデルの予測性能(C統計量0.72)は、PREDICTやPREVENT方程式による予想性能とほぼ同程度であることが明らかになった。C統計量が0.72とは、予測モデルが72%の確率でリスクが高い人と低い人を正しく識別できることを意味する。 Arnott氏は、「われわれの開発したAIモデルは、マンモグラフィ画像のさまざまな特徴と年齢だけを組み合わせた初めてのモデルだ。このアプローチの主な利点は、追加の病歴聴取や医療記録データを必要としないため、実装に必要なリソースが少なくて済むにもかかわらず、非常に正確であることだ」と述べている。 研究グループによると、このAIモデルは特に、すでに効果的な乳がん検診プログラムを実施している国の女性にベネフィットをもたらす可能性があるという。論文の筆頭著者であるジョージ国際保健研究所のJennifer Barraclough氏は、「本研究では、この革新的な新しいスクリーニングツールの可能性を明らかにした。今後は、さらに多様な集団でこのモデルを検証し、臨床への導入にあたり障壁となり得るものを理解していきたい」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。(HealthDay News 2025年9月17日) https://www.healthday.com/health-news/women-health/can-mammograms-assess-womens-heart-health Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock