1日に2~3回使用する点眼薬が、将来的には老眼鏡に取って代わる老眼対策の手段となる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。点眼薬を使用した人のほとんどが、視力検査で使用されるジャガーチャート(以下、視力検査表)を2、3行以上余分に読めるようになっただけでなく、このような視力の改善効果が2年間持続したことが確認されたという。老眼先端研究センター(アルゼンチン)センター長であるGiovanna Benozzi氏らによるこの研究結果は、欧州白内障屈折矯正手術学会(ESCRS 2025、9月12~16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。 この点眼薬には、瞳孔を収縮させ、近見の焦点を調節する筋肉を収縮させるピロカルピンと、ピロカルピン使用に伴う炎症や不快感を軽減するNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)のジクロフェナクという2種類の有効成分が含まれている。研究グループは、766人(平均年齢55歳、男性393人、女性373人)を対象に、異なるピロカルビン濃度(1%、2%、3%)の点眼薬を投与する3つのグループに分けて、その有効性を調べた。対象者は、最初に点眼薬を投与されてから1時間後に老眼鏡なしで視力検査表をどの程度読めるかをテストし、その後2年間にわたって追跡調査を受けた。 その結果、ピロカルピン1%群(148人)の99%が最適な近見視力に達し、視力検査表で読むことができる行数が2行以上増えたことが示された。また、ピロカルピン2%群では69%、ピロカルピン3%群では84%が3行以上多く読むことができた。点眼薬によるこのような視力の改善効果は、最長で2年間、中央値で434日、持続した。副作用は概ね軽度であり、患者の32%が一時的な視界の暗さやぼやけを経験し、3.7%が点眼時の刺激感、3.8%が頭痛を報告したが、使用を中止した患者はおらず、眼圧の上昇や網膜剥離などの深刻な目の問題は見られなかった。 Benozzi氏は、「これらの結果は、老眼の重症度に応じて異なる濃度の点眼薬を処方できる可能性があることを示唆している。老眼が軽度の患者は1%の濃度で最もよく反応したが、老眼がより進んだ患者では、視力の大幅な改善を達成するために2%または3%のより高い濃度が必要だった」と述べている。 この研究結果をレビューしたボーフム大学(ドイツ)眼科病院の眼科部長Burkhard Dick氏は、「この研究結果は、老眼手術を受けられない人にとっては特に重要な可能性がある」と話す。ただし同氏は、ピロカルピンとNSAIDを長期使用すると、望ましくない副作用が生じる可能性があると指摘し、「この治療法が広く推奨される前に、安全性と有効性を確認するためのより広範で長期にわたる研究が必要だ」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年9月15日) https://www.healthday.com/health-news/eye-care/eye-drops-replacing-reading-glasses-new-study-says-its-possible