実験段階にあるワイヤレスデバイスが、アスリートの筋肉の断裂や捻挫、筋損傷からの回復の一助となる可能性があることを示唆する新たな研究の結果が明らかになった。米デューク大学機械工学・材料科学分野のXiaoyue Ni氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」9月3日号に掲載された。 このデバイスは体表面に音波を送り、それによって生じた振動を検出することで、組織の硬さを測定できるという。Ni氏らは、「ちょうど、絵を壁に掛けるときに、間柱を探そうとして壁をたたくのと同じだ。間柱のない所をたたくと低い音がするが、間柱のある所をたたくとより高い音がする」と話す。同氏らによると、組織の硬さは医師にとって重要な情報であり、がんの診断や蘇生、筋肉損傷など、さまざまな問題の把握に役立つという。しかし現状では、組織の硬さを測定するには大型で高価な超音波装置が必要である。 試作段階のデバイスは、重さ4.9gのMAW〔Mechano-Acoustic Wave〕センサーと直径26.5mm、重さ10gで円盤型の振動アクチュエーターで構成されており、皮膚の上なら体のどこにでも貼り付けることができる。デバイスはバッテリーで作動し、Bluetoothデバイスとワイヤレスで通信可能である。このデバイスは、50Hz(雷鳴のような低音)から800Hz(救急車のサイレンのような高音)までの周波数を走査して組織の硬さを測定し、皮膚とその下の組織を識別することが可能である。 このデバイスをスポーツウェアに組み込めば、筋肉のパフォーマンスについてリアルタイムでフィードバックを得られる可能性があると研究グループは説明している。それによってアスリートはトレーニングセッションを最適化し、疲労への対策を講じ、負傷からの回復に向けてうまく調整できるかもしれない。Ni氏は、「将来的には、この技術をスポーツギア、医療用の包帯、日常着、あるいは支援用ロボットに組み込み、身体の内部の状態を持続的に把握できる『ヘルス・ダッシュボード』を作るというビジョンを描いている」と今後の展望について話している。さらに同氏は、「それはスマートウォッチのように簡単に身に着けられ、しかもはるかにパワーを持ったものになるだろう」とニュースリリースの中で付け加えている。 論文の筆頭著者でNi氏の研究室の博士課程の学生であるChenhang Li氏は、「この自動化された二層モデルによる解析を構築し、それをシステム全体の設計に組み込むことが、このプロジェクトで最も困難な部分だった。信号処理をリアルタイムで行う方法を見つけ、数多くの検証テストを完了する必要があった。ここまで来るのは長い道のりだった」とデューク大学のニュースリリースの中で述べている。 このデバイスの概念が実証された今、研究グループはその最も有望な用途について調べる計画を立てている。Ni氏は、「私は最近、初めての出産を経験したが、自分の母乳の供給量をリアルタイムで把握するのにこのデバイスを使えることが分かった。これまで、このような組織の硬さを測定するモニターは作られたことがなかった。したがって、その応用の可能性は無限に広がっている」と述べている。(HealthDay News 2025年9月18日) https://www.healthday.com/health-news/health-technology/experimental-patch-provides-real-time-feedback-on-muscle-performance Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: bill snead -- Duke University