
どんな量であっても飲酒は認知症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。予防効果がある可能性が指摘されていた少量のアルコール摂取でさえ、認知症リスクを下げる可能性は低く、リスクは摂取量に応じて増加することが示されたという。英オックスフォード大学のAnya Topiwala氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に9月23日掲載された。
研究グループは、「この研究結果は、軽度の飲酒が認知症予防に効果的である可能性を示した過去の研究に疑問を投げかけるものだ。われわれの研究結果は、種類を問わず、飲酒が認知症リスクに有害な影響を及ぼすことを裏付けており、これまで示唆されていた適度な飲酒の予防効果を裏付けるエビデンスは認められなかった」と述べている。
この研究では、米国(US Million Veteran Programme)と英国(UKバイオバンク)で行われた2つの大規模研究に参加した総計55万9,559人(試験開始時の年齢56〜72歳)のデータを用いて、飲酒と認知症との関連が検討された。平均追跡期間は、米国コホートで4年、英国コホートで12年であった。
追跡期間中に1万4,540人が認知症を発症し、4万8,034人が死亡していた。まず、対象者のアルコール摂取量と認知症との関連を見たところ、U字型の関連が認められた。具体的には、アルコールを摂取しない人、大量摂取者(1杯=エタノール約14gとした場合、週40杯以上)、およびアルコール使用障害のある人は、軽度摂取者と比べて認知症リスクが有意に高く、大量摂取者ではリスクが41%、アルコール使用障害のある人では51%、それぞれ増加していた。
しかし、対象者の認知症とアルコール摂取に関する遺伝的リスクを考慮すると、アルコール摂取量に関係なく、摂取量が増えるにつれてリスクは着実に上昇することが示された。具体的には、対数変換した1週間当たりのアルコール摂取量が1標準偏差増えるごとに、認知症リスクは15%増加し、遺伝的にアルコール使用障害になるリスクが2倍の人では認知症リスクは16%増加していた。
研究グループは、「アルコール使用障害の人口罹患率を半減させることで、認知症の症例を最大16%減らすことができる可能性がある。この結果は、認知症予防政策においてアルコール摂取量の削減が戦略となり得ることを明示している」と記している。
さらに、認知症を発症した人では、診断前の数年間はアルコール摂取量が少なかったことも明らかになった。このことから研究グループは、過去の研究では、適度な飲酒に認知症の予防効果があることが示唆されていたが、実際には、早期の脳機能低下がアルコール摂取量の減少につながっていたのであり、観察された効果は因果の逆転に陥っていた可能性が高いとの見方を示している。
こうしたことを踏まえて研究グループは、「本研究で観察された認知症診断前のアルコール摂取量の減少パターンは、特に高齢者集団において、観察データから因果関係を推測することの複雑さを強調している」と記している。この研究結果は、アルコール摂取と認知症に関する研究では逆因果関係と残余交絡を考慮することの重要性を浮き彫りにしており、アルコール摂取量を減らすことが認知症予防の重要な戦略となる可能性があることを示唆している」と結論付けている。(HealthDay News 2025年9月24日)
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