近年、米粒よりも小さいプラスチック片であるマイクロプラスチック(MP)の拡散が懸念されている。こうした中、ペットボトルで販売されていない飲み物も含め、ソフトドリンク、紅茶、コーヒーなど、検査された全ての温かい飲み物と冷たい飲み物にMP粒子が混入していることが、新たな研究で明らかになった。英バーミンガム大学のMuneera Al-Mansoori氏らによるこの研究結果は、「Science in the Total Environment」に9月20日掲載された。 MPとは、直径5mm以下のプラスチック片で、中にはマイクロメートル(μm)またはミクロン単位の非常に小さなサイズのものもある。MPの摂取は、生殖器系、消化器系、呼吸器系の損傷など、人体への健康被害につながる可能性が指摘されている。 今回、Al-Mansoori氏らは、イギリスで市販されている31種類の飲み物を対象に、MPの含有量を調査した。飲み物は、ソフトドリンク、エナジードリンク、フルーツジュース、アイスティー、ホットティー、ホットコーヒー、アイスコーヒーの7つのカテゴリーに分類された。提供形態は、ペットボトル、紙製の使い捨てカップ、ガラスのカップなどさまざまであった。なお、本研究では合成プラスチックポリマーを検査対象とし、自然界で生成され、時間の経過とともに分解するセルロースのMPは含めなかった。 その結果、飲み物の提供形態に関わりなく、調査した全てのサンプルからMPが検出された。平均濃度が最も高かったのはホットティーで60±21MP/Lであり、次いで、ホットコーヒーでの43±14MP/L、アイスコーヒーでの37±6MP/L、アイスティーでの31±7MP/Lであった。温かい飲み物は冷たい飲み物に比べてMP濃度が有意に高く、温度が高いと包装材からのMP溶出が促進されることが示唆された。ジュースのMP濃度は30±11MP/L、エナジードリンクは25±11MP/Lで、濃度が最も低かったのはソフトドリンクの17±4MP/Lであった。 検出されたMPのサイズは10〜157μmで、髪の毛1本が約70μmであることを考えると、ほとんど目に見えないサイズだと言える。形状は破片、ポリマーの種類はポリプロピレン(PP)が最も多かった。ただし、本研究では、10μmを超える粒子しか検出されなかったため、さらに小さなナノプラスチックが存在していた可能性があることを研究グループは指摘している。 研究グループによると、飲み物中の合成プラスチックの含有量を増加させ得る要因としては、熱、炭酸(泡が容器にかける圧力やストレスでMP量が増加する)、酸性度の高さ、包装材(ペットボトル入りの飲料は紙やアルミボトル入りの飲料よりもMP濃度が高い)の4つが考えられるという。また、飲み物がパッケージ化される場所の空気や飲み物に使用される水がMPの発生源になる可能性もあると指摘している。 世界中でプラスチックの消費と廃棄物が増加し続ける中、MPは新たな経路で環境に侵入し、最終的には食物連鎖に入り込んでいる。こうした事態を受けて米イリノイ州環境保護局は、MPへの曝露を減らすために以下の方法を提案している。それらは、1)可能な限り、プラスチックフリーの包装食品、飲料、衛生用品を選択すること、2)プラスチックの使用を減らし、微生物により分解される材質のものを選ぶこと、3)使用済みのプラスチックは、特に摩耗の兆候が見られる場合にはリサイクルに出すこと、4)買い物にはエコバッグを使用すること、5)衣類は可能な限り天然繊維(綿、ウール、シルク)を選ぶことである。(HealthDay News 2025年10月2日) https://www.healthday.com/health-news/environmental-health/study-finds-microplastics-in-all-tested-beverages-especially-hot-drinks Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock