乳がんのサブタイプとしては2番目に多い浸潤性小葉がん(ILC)が米国で増加しているようだ。新たな研究で、2012年から2021年にかけてのILCの発症率は年間2.8%ずつ増加しており、その他の乳がんの増加率(0.8%)の約3倍に達していることが明らかになった。米国がん協会(ACS)のがんサーベイランス研究のAngela Giaquinto氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に10月7日掲載された。 Giaquinto氏は、「ILCは乳がん全体の10%強を占めるに過ぎないが、毎年新たにILCと診断される人の多さを考えると、この乳がんを理解することは重要だ」と述べている。さらに同氏は、「ILCの7年を超える生存率は、最も一般的な乳がんである浸潤性乳管がんと比べると大幅に低い。このことは、このがんをターゲットにした予防と早期発見の戦略を最優先で推進する必要があることを示している」と付け加えている。 ILCは、乳房の乳汁を産生する小葉と呼ばれる腺で発症するがんである。研究グループによると、乳がんの統計や臨床試験のデータは、乳がんの圧倒的に多い組織型である浸潤性乳管がんに偏っており、次に多いILCの特徴が見えにくくなっている。しかし、ILCは他の乳がんとは異なる形で現れ、増殖すると研究グループは指摘する。例えばILCは、他の乳がんのように塊(しこり)を形成せず、分散したパターンで増殖するため検出されにくく、診断が遅れる可能性があるという。 Giaquinto氏らは今回、米国国立がん研究所(NCI)と米疾病対策センター(CDC)の全国規模のがん登録データを用いて、年齢、人種・民族別にILCの罹患率と予後を調査した。 その結果、2021年でのILCの罹患率は10万人当たり14人で、あらゆる乳がんの診断の10.6%を占めることが明らかになった。また、2012年から2021年にかけて、ILCの発症率は年間2.8%増加しており、他の乳がん全体(年間0.8%増)と比べて増加の傾きが急だった。ILC症例が最も急増しているのはアジア系米国人/太平洋諸島系の女性で、年間4.4%の増加であった。人種別では白人女性の発症率が最も高く(10万人当たり14.7人)、年齢層別に見ても全ての年齢層でトップだった。次いで多いのは黒人女性(10万人当たり11人)であった。予後については、ILC患者の生存率は、診断後7年間は浸潤性乳管がん患者よりわずかに高かったが(90.4%対89.7%)、10年生存率はほぼ同等であった。ただし、ILCがリンパ節や周囲の臓器に転移している女性(76.4%対78.2%)や遠位部に転移している女性(12.1%対19.6%)では、10年生存率が浸潤性乳管がん患者より低かった。 論文の上席著者であるACSがん監視研究の上級科学ディレクターであるRebecca Siegel氏は、「ILCは、短期的な予後が非常に良好であることから研究がほとんど進んでいない。しかし、転移した場合の10年後の生存率は浸潤性乳管がん患者の半分程度にとどまる。これは、転移がんに特有の転移パターンと治療抵抗性によるものと考えられる」と述べている。 さらにSiegel氏は、「われわれの研究は、遺伝子研究から臨床試験データまで、ILC全般に関するより多くの情報が必要であることを強調している。そうした情報の入手により、ILCに罹患する女性が増加傾向にあっても治療成績を向上させることが可能になる」と結論付けている。(HealthDay news 2025年10月8日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/rare-dangerous-type-of-breast-cancer-on-the-rise-in-the-us Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock