外傷性脳損傷(TBI)を起こした高齢者は、後年に認知症の発症リスクの上昇や、在宅介護サービスや長期療養施設への入所などの医療や介護のニーズの高まりと関連することが、新たな研究で明らかにされた。トロント大学(カナダ)保健政策・経営・評価研究所のJenny Yu Qing Huang氏らによるこの研究結果は、「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」10月6日号に掲載された。 Huang氏らは、「高齢者のTBIで最もよくある原因の一つは転倒だが、これは多くの場合予防可能だ。転倒関連のTBIを標的とすることで、高齢者集団におけるTBI関連認知症を減らせる可能性がある」と述べている。 TBIは、頭をぶつけたり激しく揺さぶられたりして脳が頭蓋骨の内側に衝突し、損傷を受けることで起こる。Huang氏らによると、高齢者のTBIの50%以上は転倒が原因であるという。 今回の研究でHuang氏らは、カナダのオンタリオ州で2004年4月1日から2020年3月1日の間にTBIを経験した65歳以上の高齢者13万2,113人と、年齢や性別、TBIリスクなどを反映した傾向スコアを用いて1対1でマッチングしたTBI未経験の対照を対象に、TBIと認知症の発症および医療・介護のニーズとの関連を検討した。 その結果、TBI経験者ではTBI未経験者と比べて、5年以内に認知症を発症するリスクが69%、それ以降に発症するリスクが56%高いことが明らかになった。また、公的在宅介護の利用リスクは30%、長期介護施設入所リスクは45%高かった。さらに、認知症の発症者は、低所得地域に住む女性で男性よりも多く(29%対24.7%)、小規模コミュニティの住民は大規模コミュニティの住民に比べて在宅介護の利用率が低い一方で(60.1%対64.6%)、長期介護施設への入所率は高いこと(26.3%対21.7%)も示された。このほか、85歳以上の人では、3人に1人(31.3%)がTBI後に認知症を発症することも予測された。 研究グループは、「TBIはこれまで、成人期の認知症のリスク因子として研究対象にされてきたが、本研究結果は、高齢期におけるTBIの経験も認知症リスクを有意に上昇させることや、そのリスクが時間の経過とともにどのように変化するのかも示している。この重要な知見は、臨床医が高齢患者とその家族に対して、TBIがもたらす長期的なリスクをよりよく理解させる上で役立つだろう」と述べている。(HealthDay News 2025年10月7日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/concussions-could-increase-dementia-risk-among-seniors Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock