ホスピスでケアを受けているアルツハイマー病および関連認知症(ADRD)患者に対するベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)および抗精神病薬の使用は、患者の死を早めている可能性のあることが新たな研究で示された。ホスピス入所後にベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬の使用を開始したADRD患者では、使用していなかった患者と比べて180日以内に死亡するリスクがそれぞれ41%と16%高いことが示されたという。米ミシガン大学の老年精神科医であるLauren Gerlach氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月14日掲載された。 ホスピスケアは、もともとは死期の近いがん患者の精神的・身体的苦痛を緩和するために作り出されたが、今ではその対象は認知症などの他の末期疾患患者にも広がっている。研究グループによると、ホスピスに入所するADRD患者の割合は、1995年の1%未満から2023年には25%にまで増加している。しかし、ADRDはがんと比べると、長期にわたり予測不可能な経過をたどるため、ホスピス入所患者が必ずしもすぐに死亡するわけではない。実際、これらの患者の約20%は、ホスピス入所条件である予後6カ月を超えて生存し、ケアプログラムを終えていると研究グループは述べている。 研究グループによると、ホスピス入所患者の興奮、不安、せん妄の管理ではベンゾジアゼピンや抗精神病薬が処方されることが多い。しかし、これらの薬の使用は、転倒や混乱、鎮静のリスクを高め、患者の生活の質(QOL)に影響を及ぼす可能性がある。 この研究でGerlach氏らは、ホスピス施設に処方箋の報告が義務付けられていた2014年7月1日から2018年9月30日までの間の全国のメディケアデータを分析した。対象は、ホスピス入所前の6カ月間にベンゾジアゼピンや抗精神病薬の使用歴がないADRD患者13万9,103人(平均年齢87.6歳、女性75.8%)とした。ホスピス入所時にベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬の使用リスクが高いとされた患者はそれぞれ10万58人と11万4,933人で、入所後、4万7,791人(47.8%)と1万5,314人(13.4%)で実際に薬の使用が開始されていた。患者のホスピス滞在日数の平均は130日を超えていた(ベンゾジアゼピン使用患者で136.4日、抗精神病薬使用患者で154.0日)。 ベンゾジアゼピンと抗精神病薬の使用患者と非使用患者を1対1でマッチングしたペア(ベンゾジアゼピンで2万6,872ペア、抗精神病薬で1万240ペア)を抽出して、それぞれの薬の使用と死亡との関連を検討した。その結果、使用患者では非使用患者と比べて、薬の使用開始後180日以内に死亡するリスクが、ベンゾジアゼピンでは41%、抗精神病薬では16%、有意に上昇することが示された。 Gerlach氏は、「こうした早期の処方パターンは、これらの薬が個々の患者に合わせて調整されるのではなく、標準的なホスピスケアの実践の一部として使用されているケースがあることを示唆している」と述べている。その上で同氏は、「ホスピス滞在期間中に認知症患者に使用する薬は、QOLを低下させるのではなく、向上させるものでなければならない」と話す。さらに同氏は、「メディケアのホスピス給付は、加入者のほとんどががん患者で、病状の経過が短く予測可能であることを想定して設計されている。病気の進行が何年にもわたることがあるADRD患者に適したケアモデルと処方ガイドラインが必要だ」と指摘している。(HealthDay News 2025年10月16日) https://www.healthday.com/health-news/senior-health/common-hospice-meds-increase-death-risk-for-alzheimers-dementia-patients Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock