たとえ健康的な体重であっても、腹部や肝臓の奥深くに脂肪が蓄積すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが静かに高まる可能性があるようだ。内臓脂肪(visceral adipose tissue;VAT)と、VATほどではないが肝脂肪(hepatic fat;HF)は、頸動脈のアテローム性硬化リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。マクマスター大学(カナダ)保健科学部のSonia Anand氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に10月17日掲載された。 BMIが正常範囲内の人でも、このような隠れ肥満である可能性はある。Anand氏は、「見た目だけで必ずしもVATまたはHFの有無を判断できるわけではない」とマクマスター大学のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「VATやHFは代謝的に活発で危険だ。太り気味でないことが明らかな人でも、この種の脂肪は炎症や動脈損傷と関連している。だからこそ、肥満と心血管リスクの評価方法を見直すことが非常に重要なのだ」と付け加えている。 今回の研究でAnand氏らは、Canadian Alliance for Healthy Hearts and Minds(CAHHM)研究への参加者6,760人(平均年齢57.1歳、女性54.9%)を対象に、VATとHFが、従来の心血管リスク因子の影響を考慮した上でも頸動脈のアテローム性硬化と関連しているかを検討した。参加者は、MRIでVAT量、HF含有量(HFF)、および頸動脈壁の体積さ(CWV)を測定された。その結果、VAT量が1標準偏差(SD)増加するごとに、CWVは6.16mm³増加することが示されたが、HFFとの関連は認められなかった。 次に、UKバイオバンク参加者2万6,547人(平均年齢54.7歳、女性51.9%)のデータを用いて、この結果の再現性を検討した。UKバイオバンク参加者では、VAT量および肝脂肪量(プロトン密度脂肪分画〔PDFF〕)と超音波で測定した頸動脈内膜中膜厚(CIMT)の関連が評価された。 その結果、VAT量が1SD増加するごとにCIMTは0.016±0.0009mm増加、PDFFが1SD増加するごとにCIMTが0.012±0.0010mm増加することが示された。しかし、心血管リスク因子で調整すると、これらの関連はやや弱まった。 CAHHMとUKバイオバンクを統合した解析では、VATとHFFは、性別を問わず頸動脈の前臨床段階のアテローム性硬化と正の関連があることが示された。ただし、HFFの影響は、VATと比べるとやや弱かった。 論文の筆頭著者であるマクマスター大学健康研究方法論・エビデンス・影響評価学分野のRussell de Souza氏はニュースリリースの中で、「この研究は、コレステロールや血圧といった従来の心血管リスク因子を考慮しても、VATとHFが依然として動脈損傷の一因となっていることを示している」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は、医師がBMIにのみ頼るのではなく、患者の脂肪分布を画像診断に基づいて評価することを検討する必要があることを示している」との見方を示している。また中年成人は、見た目が極端に太っていなくても、隠れた脂肪が健康を害している可能性があることも考慮すべきだと付言している。 なお、米クリーブランド・クリニックは、VATは、活動的な生活、健康的な食事、十分な睡眠、ストレスの軽減、飲酒の制限によって取り除くことができるとしている。(HealthDay News 2025年10月21日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/skinny-fat-contributes-to-heart-attack-stroke-risk Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock