高齢者にとって、友情は最高の薬となるかもしれない。親しい友人を車で送ったり手伝ったりするなどの実際的な支援の提供は、高齢者のポジティブな気分を高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方で、感情的支援の提供の場合には性差が見られ、女性ではポジティブな気分に影響しなかったのに対し、男性ではポジティブな気分が低下する傾向が認められたという。米ミシガン大学調査研究センターのYee To Ng氏らによるこの研究結果は、「Research on Aging」に9月26日掲載された。 Ng氏は、「高齢男性の場合、友人に感情的な支援を提供することがポジティブな気分の低下につながる可能性がある。このような気分の低下は、共感を示したり、感情について話し合ったりすることが男性に期待される役割と衝突し、それが不快感や精神的ストレスを引き起こすためと考えられる」と考察している。 この研究では、米テキサス州オースティン大都市圏に住む高齢者180人(平均年齢74.02歳、女性57%)を対象に調査を行った。参加者は5〜6日にわたってエコロジカル・モーメンタリー・アセスメント(EMA)を受け、3時間ごとにポジティブ・ネガティブな気分を報告した。また、友人との支援のやり取りについても毎日報告した。友人に対する支援のタイプとして最も多かったのは、相手の話を聞いたり慰めたりといった感情的な支援であり、次いで、助言、実際的な支援の順だった。 分析からは、実際的な支援を行った日にはポジティブな気分が高まることが示された。また、男性は女性に比べて、友人に感情的支援を提供することが少ない傾向が認められた。さらに男性では、感情的な支援を提供した日にはポジティブな気分が低下する傾向も認められた。一方、女性ではこのような傾向は認められなかった。 Ng氏は、「男性も女性も友情から恩恵を受けるが、男性の友情は共通の活動に重点が置かれている。これに対し、女性の友情は感情的な親密さとコミュニケーションに重点が置かれる傾向がある」と述べている。同氏はまた、「友人というのは自分で選ぶ存在であり、通常は喜びをもたらしてくれる。そのため友人は、特に、未婚、パートナーと死別、離婚、独身、または子どものいない高齢者にとっては、感情的ウェルビーイングを保つ上で非常に重要となる可能性がある」と語っている。 さらに研究グループは、実際的な支援は友人を助けるだけでなく、支援を提供した人自身が、自分は役に立っていると感じたり、社会や活動に関わっていると感じたりすることにも役立つ可能性があると述べている。他人の用事や仕事の手伝いはたいていの場合、労力を伴うことから、高齢者の目的意識の向上にもつながり得る。特に高齢男性にとっては、こうした積極的かつ実践的な支援方法を推進することが、長期的に見て大きな価値をもたらす可能性がある。 これらのことを踏まえてNg氏は、「こうした高齢者支援プログラムでは、感情的支援に加え、社会との関わり方の別の手段を模索すべきだ。あるいは、感情的支援のやりとりの中で意味付けを促すことで、高齢男性の感情的ウェルビーイングをより効果的に支援するべきだ。なぜなら感情的な支援は、少なくとも親しい友人に対して行う場合、日々の感情的負担を伴う可能性があるからだ」と述べている。 研究グループは今後の研究で、高齢者が友人の介護をする動機を探る研究を行う予定であると述べている。なお、この研究は、米国立老化研究所の支援を受けて実施された。(HealthDay News 2025年10月19日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/why-lending-a-hand-can-boost-happiness-as-you-age Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock