「目は心の窓」とよく言われるが、新たな研究によると、目は心臓の健康状態を知るための窓としても機能する可能性があるようだ。新たな研究で、網膜の血管から心臓病のリスクや老化の加速の有無を予測できる可能性のあることが明らかになった。マクマスター大学(カナダ)医学部のMarie Pigeyre氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に10月24日掲載された。研究グループは、「将来的には、医師は定期検診の一環として網膜スキャンを実施するようになるかもしれない」と述べている。 Pigeyre氏は、「網膜スキャン、遺伝学、血液バイオマーカーを結び付けることで、われわれは、老化が血管系にどのような影響を与えるかを説明する分子経路を発見した」と語っている。また同氏は、「目は、体内の循環器系を非侵襲的に観察できるという点で他に類を見ない。網膜血管の変化は、全身の微小血管に起こる変化を反映することが多い」と付け加えている。 網膜の血管の複雑性は血管老化の指標とされており、眼底写真から網膜血管のフラクタル次元(Df)を測定することで評価できる。Dfの値が大きいほど、血管構造の複雑性が高いことを示す。Pigeyre氏らはこのことを踏まえて、カナダ、スコットランド、英国の3つの大規模コホート研究のいずれかに参加した7万4,434人を対象に、マルチモーダル手法に基づいて、Dfに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。 その結果、Dfの値と心血管疾患リスクとの間に負の関連が認められ、Dfの値が低いほど心血管疾患、脳卒中、および炎症のリスクは上昇することが明らかになった。一方、Dfの高値は寿命が長いことと関連していた。 次に、Prospective Urban and Rural Epidemiological(PURE)コホート研究参加者から得られた1,159種類の血中タンパク質を対象に、プロテオーム全体にわたるメンデルランダム化解析を行い、血管の老化に因果的に関与する可能性のあるタンパク質を探索した。その結果、8つの因果的媒介因子が特定された。その中でも、MMP12とIgG-Fc receptor IIbは、炎症が強いほどDfが低下し、心血管疾患リスクが上昇し、寿命が短くなることに関係していた。 Pigeyre氏は、「この研究結果は、MMP12とIgG-Fc receptor IIbの2つのタンパク質が、血管の老化を遅らせ、心血管疾患の負担を軽減し、最終的には寿命を延ばすための潜在的な薬剤ターゲットとなり得ることを示唆している」と話している。(HealthDay News 2025年10月28日) https://www.healthday.com/health-news/eye-care/eye-scans-might-help-determine-heart-health-risk-experts-say Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock