頭蓋骨内で脳を保護する髄液に原因不明の圧力上昇が生じた状態を指す「特発性頭蓋内圧亢進症(idiopathic intracranial hypertension;IIH)」によって、視力障害が起こる可能性が高い患者を予測する方法を見出したと、南デンマーク大学神経内科学臨床教授のDagmar Beier氏らが報告した。眼内の視神経が網膜につながっている部分(視神経乳頭)の変化に基づき、将来的に視野に暗点(見えない部分)が現れる人や視覚の鮮明さが低下する人を予測できる可能性が示されたという。この研究の詳細は、「Neurology」に10月29日掲載された。 IIHは、出産可能年齢の肥満女性に多く見られ、未治療のまま放置すると失明につながることがある。米国眼科学会(AAO)によると、IIHに関連する症状には日常生活に支障をきたす慢性の頭痛や複視、視力低下、聴覚障害、吐き気などがある。Beier氏は、「IIHの症例数は増加傾向にあり、若い女性がその主な患者層となっている。それゆえ、どのような人が視覚障害を起こしやすいのか、また、どのような過程を経て進行するのかについて、より多くの情報が必要だ」とニュースリリースの中で述べている。 今回報告された研究では、デンマークの2施設の頭痛治療センターで、2018年1月から2022年9月までに治療を受けた18歳以上のIIH患者154人(平均年齢28歳、女性96.8%)のデータが分析された。網膜関連データがそろった124人のうち94%(117人)はうっ血乳頭を発症していた。また、69%(37/54人)の患者で、一時的または永続的な視野欠損をもたらす暗点が発生していた。さらに26%(17/66人)で視覚の鮮明さの低下(視力低下)が見られた。全ての患者が高い頭蓋内圧を下げる薬剤を使用しており、寛解に関するデータが113人で得られた。薬剤により頭蓋内圧が正常に戻った後も、半数の患者で暗点が残り、13%の患者で視力低下が続いていたが、完全な失明に至った患者はいなかった。 解析の結果、乳頭浮腫の重症度に応じ、網膜損傷には二つメカニズムがあることが明らかになった。一つは、網膜神経線維層および神経節細胞層の萎縮によるもので、周辺視野に暗点が生じるが中心視力は保たれるというもの。もう一つは、重度の乳頭浮腫が黄斑に影響を及ぼし、黄斑浮腫や滲出物、内網膜層の乱れを伴う場合に、中心視力の持続的低下を引き起こすというもの。 この結果に基づき、Beier氏らは、医師が視力障害を発症しやすいIIH患者を予測できるスコアシートを開発した。Beier氏は、「このスコアについては、実際に使用可能であると判断する前に別の集団で検証する必要があるが、われわれはうっ血乳頭の重症度と網膜内層の構造の乱れが持続的な視力障害が生じる患者を予測する主要な指標であることを突き止めたと考えている」と述べている。(HealthDay News 2025年10月30日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/how-a-brain-pressure-disorder-causes-vision-loss-and-who-might-be-affected Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: New Africa/Adobe Stock