現代のがん治療の進歩により、早期乳がんの女性の多くは乳房切除後に放射線治療を必要としない可能性のあることが、新たな臨床試験で示唆された。中間リスクの早期乳がん患者1,600人以上を10年間追跡調査したこの国際共同臨床試験では、乳房切除後に放射線治療を受けた患者と受けなかった患者との間で全生存率は同等であったことが示された。英エディンバラ大学腫瘍学教授のIan Kunkler氏らによるこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に11月5日掲載された。 この第3相ランダム化比較試験では、中間リスク乳がん患者を対象に、乳がんの手術後に胸壁への放射線照射を省略しても安全かどうかが検討された。中間リスクは、病理学的分類で、pT1N1(腫瘍2cm以下、リンパ節転移1〜3個)、pT2N1(腫瘍2cm超〜5cm以下、リンパ節転移1〜3個)、pT3N0(腫瘍5cm超、リンパ節転移なし)、またはpT2N0(腫瘍2cm超〜5cm以下、リンパ節転移なし)で組織学的グレードが3またはリンパ管侵襲あり、またはその両方を伴う場合と定義された。全対象者が乳房切除術と、腋窩リンパ節郭清や全身療法を受けていた。これらの患者は、胸壁に40〜50Gyの放射線を照射する群(808人、照射群)と、放射線照射を行わない群(799人、非照射群)にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、中央値9.6年の追跡期間における全生存率、副次評価項目は胸壁再発率、無病生存率(DFS)、遠隔転移の有無などであった。 その結果、10年後の全生存率は、照射群で81.4%、非照射群で81.9%であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比1.04、95%信頼区間0.82〜1.30、P=0.80)。胸壁再発率は照射群で1.1%(9人)、非照射群で2.5%(20人)であり、両群間の絶対差は2%未満と小さかったが、照射群でのリスク低下は統計学的に有意であった(同0.45、0.20〜0.99)。DFSは照射群76.2%、非照射群75.5%(同0.97、0.79〜1.18)、遠隔転移のない生存率はそれぞれ78.2%、79.2%(同1.06、0.86〜1.31)であり、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 Kunkler氏は、「現代の化学療法は、ほとんどの患者で放射線治療を回避できるほど再発リスクが低いことが実証された」と述べている。 医師らは、この研究結果が中程度のリスクのある女性に対する治療法の明確化に役立つと述べている。そうした医師の1人で、本研究には関与していない米ダナ・ファーバーがん研究所のHarold Burstein氏は、「低リスクのがん患者では乳房切除術後に放射線治療が必要ないことは知られていたが、高リスク患者では放射線治療が必要であり、乳房切除術後にも放射線治療が行われる」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 実際、放射線治療は短期的および長期的に、皮膚の炎症、腫れ、肺の炎症、リンパ浮腫のリスク上昇などの副作用を引き起こす可能性があるため、低リスクの患者にはすでにあまり使用されていない。しかし専門家らは、放射線治療の恩恵を受ける高リスク患者にとっては、同治療が依然として重要であると警告している。(HealthDay News 2025年11月6日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/many-breast-cancer-patients-can-safely-skip-radiation-after-mastectomy-study-finds Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock