食事を摂取する時間と断食する時間を定期的に繰り返す断続的断食(インターミッテントファスティング)を行っても、成人の思考力、記憶力、問題解決能力などの知的機能が鈍ることはないことが、新たな研究で明らかになった。オークランド大学(ニュージーランド)心理学准教授のDavid Moreau氏とザルツブルク大学(オーストリア)生理学部のChristoph Bamberg氏によるこの研究結果は、「Psychological Bulletin」に11月3日掲載された。 Moreau氏は、「本研究により、全体的には、短期間の断食が知的機能を低下させるという一貫したエビデンスは存在しないことが明らかになった。断食を行った人の認知機能の成績は、直前に食事をした人と驚くほど似通っていた。これは、食物を摂取していない状態でも認知機能は安定していることを示唆している」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。 Moreau氏はまた、「ここ数年、断食が流行しているが、『空腹になると本来の自分ではなくなる』などの頻繁に耳にする言葉に言い表されているように、食事を摂取しないことで頭脳の明晰さが大きく損なわれるのではないかという懸念が広がっている」と言う。 この研究でMoreau氏らは、空腹時と満腹時の認知機能を比較した63件の研究データを統合して解析した。これらの研究の対象者数は総計3,484人、効果量(比較対象となった指標の件数)は222件、断食の時間の中央値は12時間であった。解析の結果、断食群と満腹群との間で認知機能について意味のある差は認められなかった。 この結果についてMoreau氏は、「断食は、本質的に思考力を低下させるという広く信じられている仮説に反する結果であり、ある意味、驚きではあった」と話す。同氏は、「多岐にわたるさまざまな課題において、認知機能は驚くほど安定していた。食事を抜くとすぐに思考力が低下すると思っている人は多いが、われわれが得たエビデンスを総合すると、その考え方は支持されないようだ」とコメントしている。 ただし、12時間を超える長時間の断食では認知機能がやや低下する傾向が認められ、また、成人と比べて子どもでは短時間でも認知機能の低下が顕著であった。Moreau氏は、「年齢は強力かつ顕著な調整因子であり、断食中に子どもの成績は顕著な低下を示した。これは朝食を取ることが若年層の認知機能に有益であることを示した過去の研究結果と一致する」と話している。同氏はさらに、「この研究結果は、発達中の脳はエネルギー不足に対して非常に脆弱であり、小児において断食による介入を評価する際には特別な配慮が必要であることを示唆している」と付け加えている。 それでも研究グループは、全体的には、断続的断食の活用を支持する結果であったとの見方を示している。Moreau氏は、「最も重要なのは、この結果が含意する、安心感をもたらすメッセージだ。つまり、短期間の断食中でも認知機能は安定しており、健康な成人であれば、一時的な断食が頭脳の明晰さや日常の作業をこなす能力に影響を与えることを心配する必要はまずないということだ」と述べている。(HealthDay News 2025年11月5日) https://www.healthday.com/health-news/nutrition/intermittent-fasting-doesnt-affect-mental-ability-review-finds Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Jo Panuwat D/Adobe Stock