雷雨の最中や直後に喘息症状が急増する現象は、雷雨喘息と呼ばれている。この現象について検討した新たな研究で、雷雨の日には、実際に喘息関連の救急外来(ED)受診が大幅に増加することが示された。米カンザス大学医療センターのDiala Merheb氏らによるこの研究結果は、米国アレルギー・喘息・免疫学会年次学術会議(ACAAI 2025、11月6〜10日、米オーランド)で発表された。Merheb氏は、「これらの結果は、米国においても、雷雨が喘息患者に深刻な健康リスクをもたらす可能性があることを裏付けている」と述べている。 Merheb氏らによると、雷雨喘息は世界的に広く報告されている現象であり、世界アレルギー機構も認めていると研究者らは背景説明の中で述べている。しかし、米国の花粉が多い地域における雷雨喘息に関する研究は限定的であり、米国人に対する脅威は十分に理解されていないという。 この研究では、2020年1月1日から2024年12月31日の間にカンザス州ウィチタの3カ所の病院で発生した4,439件の喘息関連のED症例を分析し、雷雨との関連を検討した。雷雨日は、米国立環境情報センターの気象データを用いて調べた。 研究対象期間中に発生した雷雨日は38日で、試験対象期間のわずか2%を占めるに過ぎなかったが、雷雨日には喘息関連ED受診の14.1%(627/4,439件)が発生していた。ED受診件数の平均は、雷雨の日で17.91件であり、雷雨ではない日(3.09件)と比較して有意に多かった。 Merheb氏は、「嵐は予測不可能なので、患者と医療提供者は、喘息の行動計画に雷雨に特化した予防措置を含める必要がある」とACAAIのニュースリリースで述べている。 米ハーバード大学医学大学院によると、気象現象の展開次第で雷雨によって喘息発作が起きやすくなる可能性があるという。そのメカニズムは次のように説明されている。まず、冷たい下降気流によって花粉やカビなどのアレルゲンが濃縮され、それが湿気を帯びた厚い雲の中に巻き上げられる。雷雨の際には、風、湿気、雷によりそれらの粒子が分解され、肺の奥深くまで簡単に吸い込まれるようになる。さらに、嵐の際に突風により小さな粒子が集められることで、大量吸入の可能性が高まる。 共同研究者であるカンザス大学医療システムのアレルギー専門医であるSelina Gierer氏は、「自分の子どもが喘息持ちである人は、花粉の飛散量が多い日や寒い天候に備えるのと同じように、雷雨にも注意を払うべきだろう。誘因を理解し、明確な行動計画を立てることで、ED受診を回避することができる」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年11月7日) https://www.healthday.com/health-news/asthma/thunderstorm-is-approaching-brace-for-an-asthma-attack Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: firewings/Adobe Stock