世界保健機関(WHO)が11月12日に公表した最新データによると、2024年の世界での結核の推定発症者数は2023年の1080万人から1%減の1070万人、結核による推定死亡者数は2023年の127万人から3%減の123万人といずれも減少した一方、新規診断数は2023年の820万件から微増して830万件であったという。2024年の新規診断数は推定発症者数の78%に当たり、いまだに多くの人が結核の診断を受けていないことが浮き彫りとなった。WHOは、診断、予防、治療において着実な進歩が見られる一方で、資金調達と医療への公平なアクセスにおける問題は残っており、これまでに得られた結核対策の成果が失われる恐れがあると指摘している。 結核は結核菌により引き起こされる感染症で、好発部位は肺である。結核の感染経路は、活動性結核の人の咳やくしゃみにより放出された菌を吸い込むことによる空気感染や飛沫感染である。世界人口の約4分の1が結核菌を保有しているが、実際に発病するのはごくわずかである。結核は、未治療で放置すると致命的になる可能性があり、依然として世界中で死亡原因の上位を占めている。 この報告書は、184のWHO加盟国・地域から報告されたデータに基づくもの。WHOは、新規診断数の増加は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に減少した診断数の回復を反映している可能性があるとの見方を示している。 一部の国や地域では、政治的関与や投資による結核対策の成果が着実に現れている。2015年から2024年の間に、WHOアフリカ地域では結核発症率が28%、死亡者数は46%減少した。ヨーロッパ地域ではさらに大きな改善が見られ、発症率は39%、死亡者数は49%減少した。同期間中に、100カ国以上が結核発症率を20%以上、65カ国が結核による死亡者数を35%以上減少させた。 ただし、結核を世界的に終息させるには、依然として高負荷国での取り組みを加速させる必要がある。2024年には、世界での結核発症者の87%が30カ国に集中しており、特に上位8カ国(インド、インドネシア、フィリピン、中国、パキスタン、ナイジェリア、コンゴ共和国、バングラデシュ)だけで67%を占めている。 その他、結核の迅速検査実施率は、2023年の48%から2024年には54%に増加したことや、薬剤感受性結核の治療の成功率は88%と依然として非常に高いこと、薬剤耐性結核を発症する人は減少傾向にあり、治療成功率も2023年の68%から2024年には71%に改善したことなど、結核治療の向上も確認された。 このような進歩が確認されたものの、WHOは、世界全体の結核終息戦略の進捗状況は目標達成にはほど遠い状況だと警鐘を鳴らす。大きな障害となっているのは、2020年以降停滞している結核対策への国際的な資金であり、2024年時点で、予防、診断、治療に使うことができた資金はわずか59億米ドル(1ドル157円換算で9263億円)に過ぎず、2027年までに設定された目標額である年間220億米ドル(約3兆4540億円)の4分の1強にとどまっている。WHOは、米国における最近の予算削減により結核対策の進展はさらに遅れる可能性があるとの懸念を示している。(HealthDay News 2025年11月13日) https://www.healthday.com/health-news/condition/global-tuberculosis-cases-hit-record-high-who-warns Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock