成人の心臓病患者では、血中ビタミンD濃度が最適域に達するように患者ごとに用量を調整して投与すると、そうでない場合に比べて心筋梗塞の発症リスクが5割以上低下することが示された。米インターマウンテン・ヘルスの疫学者Heidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)年次総会(Scientific Sessions 2025、11月7〜10日、米ニューオーリンズ)で発表された。 過去の研究では、血中ビタミンD濃度の低下は心臓の健康状態の悪化につながることが示されている。今回のランダム化比較試験(TARGET-D)では、急性冠症候群の成人患者630人(平均年齢63歳、男性78%)を対象に、血中ビタミンD濃度が最適(40ng/mL超〜80ng/mL以下)になるように、患者ごとに用量を調整してビタミンD投与することで、心筋梗塞の再発、脳卒中、心不全による入院、または死亡を予防できるかどうかを検証した。試験参加者の48%に心筋梗塞の既往歴があった。参加者は、3カ月ごとに血液検査で血中ビタミンD濃度を確認して投与量を調整する治療群か、ビタミンD濃度のモニタリングや用量調整を行わない標準治療群のいずれかにランダムに割り付けられた。 この研究手法についてMay氏は、「ビタミンDに関するこれまでの臨床試験では、参加者全員に同量のビタミンDを投与し、事前に血中濃度を確認せずにその潜在的な影響を検証していた」と指摘する。その上で、「われわれの取ったアプローチはこうした研究とは異なる。登録時と研究期間を通して各参加者の血中ビタミンD濃度を確認し、必要に応じて投与量を調整することで、血中ビタミンD濃度を40~80ng/mLの範囲に維持した」と説明している。なお、参加者全体の85%、治療群の52%は試験開始時のビタミンD濃度が40ng/mL未満であり、治療群が最適な血中ビタミンD濃度を達成するためには、FDAの1日当たりの推奨量である800IU(20μg)を大幅に上回る5,000IU(125μg)が必要であったという。 平均4.2年間の追跡期間中に、心筋梗塞、心不全による入院、脳卒中、死亡を含む主要心血管イベントが107件発生した(治療群15.7%、標準治療群18.4%)。解析の結果、治療群では標準治療群に比べて、心筋梗塞の発症リスクが52%低いことが示された。一方で、死亡、心不全による入院、脳卒中の発生に関しては、両群間で有意な差は認められなかった。 こうした結果からMay氏は、「心臓病に罹患している人は、自分に必要なビタミンDの量を決めるために、血液検査による血中ビタミンD濃度の測定やその投与量について、医療従事者と相談することを勧める」とニュースリリースで述べている。 研究グループは、心筋梗塞の既往歴がある人とない人の両方に対するビタミンD補充の有効性を検証するには、さらなる臨床試験が必要だと述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年11月12日) https://www.healthday.com/health-news/cardiovascular-diseases/tailored-doses-of-vitamin-d-halve-heart-attack-risk Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock