膵臓がんは、進行して致命的となるまで症状が現れにくいことから「サイレントキラー」とも呼ばれる。こうした中、新たな研究で、膵臓がんリスクの高い無症状患者では、膵臓と胆管をつなぐ膵管の拡張が、がんの進行リスクを高める独立したリスク因子であることが示された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部医学・腫瘍学教授のMarcia Irene Canto氏らによるこの研究結果は、「Gastro Hep Advances」に9月12日掲載された。Canto氏は、「この知見によりがんが早期発見されれば、生存率の向上につながる可能性がある」とニュースリリースの中で述べている。 膵臓は消化酵素やインスリンなどを産生することで、消化と血糖値の調節に重要な役割を果たしている。膵臓は体の奥深くに位置するため、定期的な健康診断で腫瘍を早期発見することは難しく、診断時にはすでに進行しているケースが多い。膵臓がんの5年生存率は3〜16%とされている。米国がん協会(ACS)によると、膵臓がんは米国のがん全体の約3%、がんによる死亡全体の8%を占めているという。 この研究では、症状はないが、膵臓がんの家族歴を有するか遺伝的に膵臓がんリスクが高い641人を対象に、膵管拡張が膵管内の高度異形成や膵臓がんへの進行リスクと関連するのかが評価された。膵臓がんの家族歴とは、膵臓がんに罹患した第一度近親者(親、兄弟姉妹、子どもなど遺伝子を50%共有している人)が1人以上存在し、膵臓がんを発症した第一度近親者のペアが1組以上存在する家系に属する人の場合を指す。一方、遺伝的リスクとは、遺伝性膵臓がんに関わるATM(ataxia telangiectasia mutated)、やBRCA1、BRCA2などの遺伝子に変異を持っていることと定義された。膵管は、直径が頭部で4mm以上、体部で3mm以上、尾部で2mm以上の場合を膵管拡張と見なし、軽度(頭部4〜5mm、体部3〜4mm、尾部2〜3mm)、中等度〜重度(頭部6mm以上、体部5mm以上、尾部4mm以上)に分類した。 追跡期間中(中央値3.6年)、97人(15%)に腫瘍を伴わない膵管拡張が認められた。このうちの10人(10.3%)では、膵管拡張が確認されてから中央値で2年以内に高度異形成または膵臓がんへの進行が確認された。解析からは、試験開始時に膵管拡張が認められた対象者が高度異形成または膵臓がんに進行する累積リスクは5年後で16%、10年後で26%と推定された。膵管拡張がある高リスク患者では進行リスクが約2.6倍高く、さらに膵嚢胞が3個以上ある場合にはリスクが約9倍に増加することも示された。 Canto氏は、「われわれは、膵管拡張という警告サインを早期に特定することで、より迅速に介入することができた。介入方法は、手術か、より頻繁な画像検査を行うかのいずれかになる」と話す。同氏はまた、膵管拡張は、腎結石や腹痛など他の健康問題を調べるための画像検査時に発見される可能性があると指摘し、「医療提供者は、膵管拡張が早急に対処すべき問題であることを認識する必要がある」と述べている。 またCanto氏は、本研究の次の段階は、膵臓スキャン画像を分析して、がんリスクをより具体的かつ正確に予測できるようAIを訓練することだと語っている。(HealthDay News 2025年11月14日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/early-warning-sign-revealed-for-a-silent-killer-cancer Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock