日本の研究グループが、骨粗しょう症患者によく見られる背骨の圧迫骨折(脊椎圧迫骨折)の新たな治療法に関する成果を報告した。脂肪由来の幹細胞(ADSC)を用いた再生医療により骨折を修復できる可能性のあることが明らかになったという。幹細胞は、骨を含むさまざまな種類の組織に成長することができる。大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の高橋真治氏らによるこの研究の詳細は、「Bone & Joint Research」に10月28日掲載された。高橋氏は、「このシンプルで効果的な方法は、治りにくい骨折にも対応可能で、治癒を早める可能性があり、患者の健康寿命を延ばす新たな治療法となることが期待される」と話している。 骨粗しょう症は、骨量が減って骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態である。骨粗しょう症患者に最も多く見られる骨折は、脊椎圧迫骨折である。脊椎圧迫骨折は長期にわたる障害につながり、生活の質(QOL)を著しく制限する可能性がある。米食品医薬品局(FDA)によると、推定2,000万人の米国人が骨粗しょう症に悩まされており、その多くは更年期に伴うホルモン変化の影響を受けた高齢女性であるという。 高橋氏らは、ADSCを骨に分化させ、3次元的に培養して「ADSC骨分化スフェロイド」と呼ばれる細胞集合体を作製した。次に、このスフェロイドを人工骨に利用されるβ-リン酸三カルシウム(β-TCP)と組み合わせた上で骨折したラットの背骨に移植し(骨分化スフェロイド群)、ADSC未分化スフェロイドとβ-TCPを移植した群(未分化スフェロイド群)、またはβ-TCPを単独で移植した群(対照群)との間で骨再生の効果を比較した。 その結果、骨分化スフェロイド群と未分化スフェロイド群では対照群と比べて、骨量および骨癒合スコアが有意に改善し、特に骨分化スフェロイド群での改善は顕著であった。また、骨分化スフェロイド群では対照群と比べて、力学的強度も有意に改善していた。組織学的解析では、骨分化スフェロイド群では他の2群に比べて骨再生が顕著であった。さらに、遺伝子発現解析の結果、骨分化スフェロイド群では、アルカリホスファターゼ(ALP)やオステオカルシン(OCN)などの骨形成マーカーや、BMP-7、IGF-1などの再生関連因子の発現が多く、アポトーシスが抑制されていることも確認された。 論文の筆頭著者である大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の澤田雄大氏は、「本研究から、ADSCを用いた骨分化スフェロイドが、脊椎骨折の新たな治療法の開発において有望であることが明らかになった。この治療法では、脂肪由来の細胞を用いているため、人体への負担が少なく、患者の安全性も確保される」とニュースリリースの中で述べている。 この新しい治療法は、現時点ではラットでのみ検証されており、人間を対象にした場合には結果が異なる可能性がある。それでも研究グループは、「この治療アプローチは、骨疾患に対する侵襲性が最小限の治療法につながる可能性がある」と期待を示している。(HealthDay News 2025年11月15日) https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/from-body-fat-to-bone-experiment-offers-hope-for-gentle-repair-of-fractures Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock