身体が健康的で筋肉量が多いと脳の健康状態が良好に維持されやすいことが、米セントルイス・ワシントン大学放射線学・神経学准教授のCyrus Raji氏らによる新たな研究で示された。Raji氏は、「筋肉量が多く内臓脂肪が少ない健康的な身体では、脳もより健康的で若々しい傾向にある」と話している。この研究結果は、北米放射線学会年次学術集会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、米シカゴ)で発表された。 Raji氏は、「年齢を重ねると、筋肉量が減り内臓脂肪が増えることは広く知られているが、こうした健康指標が脳の老化そのものに関連していることが、今回の研究で示された。体内の筋肉量と脂肪量は、脳年齢に基づいた脳の健康状態を反映する重要な指標であることが明らかになった」と説明している。 Raji氏らは今回の研究で、1,164人の健康な成人(平均年齢55.17歳、52%女性)の全身のMRI画像を収集した。MRI画像は、脂肪は明るく、体液は暗く映るT1強調画像という手法を使って撮影された。次に、AIアルゴリズムを用いて各参加者の筋肉量や脂肪量(皮下脂肪と内臓脂肪)、および推定「脳年齢」を数値化し、それらの指標と脳年齢との関係を解析した。 その結果、内臓脂肪と筋肉の比率が高い人ほど脳年齢が高いことが明らかになった。一方、皮下脂肪は脳年齢とはほとんど関係していなかった。この結果についてRaji氏は、「筋肉量が多い参加者では脳が若々しい傾向にあった一方、筋肉量に対して内臓脂肪の量が多い参加者では脳が老化している傾向にあった」と言う。また、同氏は「皮下脂肪は脳の老化には関連していなかった。つまり、筋肉量が多く、筋肉量に対する内臓脂肪量の比率が低いほど脳が若いということだ」と説明している。 Raji氏は、この研究は身体と脳の健康が密接に結び付いていることを示していると指摘し、「この研究は、体組成のバイオマーカーと脳の健康との関連について広く信じられていた仮説を実証し、今後のさまざまな代謝介入や治療の臨床試験に、これらのバイオマーカーを組み込む基盤を提供するものだ」と述べている。 またRaji氏は、「本研究から、筋肉量を維持しながら脂肪、特に内臓脂肪を減らすことが、脳の老化や脳の健康に最も良い影響を与えることが示唆された」と述べている。近年、GLP-1受容体作動薬の登場により、多くの人が余分な脂肪を減らすためにこれらの減量薬に頼るようになっている。しかし、Raji氏らによれば、GLP-1受容体作動薬は筋肉量を減らす可能性もあるという。この点を踏まえ同氏は、「今回の研究から得られた知見は、内臓脂肪のみを標的とし、筋肉量への影響を最小限に抑えたGLP-1受容体作動薬の開発に役立つ可能性がある」との見方を示している。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2025年11月25日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/want-a-younger-brain-keep-the-muscle-shed-the-fat Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock