多くの若者にとって、SNSは、友情、ニュース、ストレスなど生活の全てが集まる場所だ。18~24歳の若者を対象にした新たな研究で、たった1週間でもSNSから離れることで、不安や抑うつ、睡眠問題が緩和される可能性のあることが示された。米ハーバード大学医学大学院精神医学准教授のJohn Torous氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月24日掲載された。 この研究は、18~24歳の若者を対象に、客観的に測定されたSNSの使用時間と問題のある使い方が若者のメンタルヘルスに与える影響を調べたもの。試験に登録された417人は、2週間の観察的ベースライン期間を経て、任意で1週間のSNSデトックス介入に参加した。 登録者のうち373人(平均年齢21.0歳)がベースラインの評価を受け、295人(79.1%)がデトックス介入に参加することに同意した。デトックスによる変化として評価したのは、抑うつ(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9で評価)、不安(Generalized Anxiety Disorder-7;GAD-7で評価)、不眠(Insomnia Severity Index;ISIで評価)、孤独感(UCLA Loneliness Scaleで評価)であった。 1日当たりのSNSの平均使用時間は、ベースラインで1.9時間であったのが、介入期間中には0.5時間にまで減少した。介入を受けた参加者では、平均して、不安症状が16.1%、抑うつ症状が24.8%、不眠症状が14.5%、それぞれ有意に軽減したことが示された。孤独感については、介入の前後で有意な差は認められなかった。 Torous氏は、「SNSの使用を控えることを、第一選択の治療法や唯一の治療法にすべきではない。ただ、すでにメンタルヘルス問題を抱えていて、それに対する治療を受けているのなら、SNSの使用を減らすことで気分が改善するか試してみる価値はあるだろう」とニューヨーク・タイムズ紙に対して述べている。同氏によると、SNSの使用を減らすことで改善を強く感じた人もいれば、ほとんど変化を感じなかった人もいるなど、効果には個人差があったという。 そのような結果になった一因として、専門家の1人で本研究には関与していない米ステットソン大学心理学教授のChristopher Ferguson氏は、本研究がランダム化比較試験ではなかった点を指摘し、「参加者は期待される行動を知っていたため、それに沿って回答を変えた可能性もある」との見方を示している。 一方で、この結果がSNSとメンタルヘルスの関係についての議論に有益な情報を提供したと評価する専門家もいる。米国心理学会(APA)のチーフサイエンスオフィサーを務めるMitch Prinstein氏は、SNSの一時的な使用休止を、「お金をかけずに試せ、短期間で改善が期待できる簡単な方法」と評価している。同氏は、「これは、親や若者自身が取り組める方法だ。SNSの使用時間を大幅に減らせば、若者の気分がかなり改善する可能性がある」とニューヨーク・タイムズ紙の報道で述べている。 ただし、過去の研究では結果が一貫していない点も指摘されている。一部の研究では、「デジタルデトックス」の効果は小さいかほとんどなかったとされており、効果が長続きするかどうかは、現時点では不明である。(HealthDay News 2025年11月26日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/one-week-less-on-social-media-linked-to-better-mental-health Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock