オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。 ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。 研究グループによると、オピオイド危機を背景に、ガバペンチノイドの処方はこの10年でほぼ倍増した。Steinman氏は、「ガバペンチノイドは非オピオイド系薬剤であり、比較的安全性が高いと考えられがちだ。しかし、ガバペンチノイドを使用している患者は、それがベストの治療法なのかどうかを評価するために、定期的に医師に相談し、非薬物療法を含めた、より適切な別の治療選択肢について検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 Steinman氏らは今回の研究で、ガバペンチノイドとループ利尿薬の処方カスケードを経験している可能性の高い66歳以上の退役軍人120人(平均年齢73.9歳)の医療記録を調べた。120人のうち、106人(88.3%)は、5種類以上の薬を長期にわたって使用していた。73人(60.8%)では、浮腫の原因が記録されていたが、心不全(39.2%)や静脈うっ血(13.3%)を原因とする例が多く、ガバペンチノイドを考慮した医師はわずか4人(3.3%)にとどまっていた。また、116人(96.7%)にループ利尿薬が処方されていたが、そのほとんどは、下肢浮腫(86.7%)、心不全(13.3%)、呼吸困難(12.5%)の治療を目的としていた。 ループ利尿薬による治療開始から60日以内に、28人(23.3%)の患者で、腎機能の低下や起立時のめまい、低ナトリウムや低カリウムなどの電解質異常、転倒などのループ利尿薬に関連した健康問題が37件発生した。入院あるいは救急外来での治療が必要となった患者も6人(5.0%)いた。 Steinman氏らによると、下肢に浮腫が現れてからガバペンチノイドの服用を中止するよう指示した医師は1人だけだったという。一方で、浮腫の原因となり得る命に関わる疾患を除外するため、患者の約5人に1人が画像検査を受けていたことも明らかになった。 論文の筆頭著者であるUCSF医学部のMatthew Growdon氏は、「ガバペンチノイドは必要以上に高用量が処方されたり、効果が期待できない状態に対して処方されたりしている可能性がある。そのようなケースでは、医師はこれらの薬を処方しないこと、あるいは用量を減らして処方カスケードやその他の副作用のリスクを軽減することを検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。(HealthDay News 2025年12月3日) https://www.healthday.com/health-news/pain-management/common-painkillers-trick-doctors-into-misdiagnosing-heart-failure-study-warns Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Akhararat _Wathanasing/Adobe Stock