高齢者における孤独感の問題は、世界的な課題として浮上しつつある。特に、家族などの介護をしている人は、介護という責任重大な仕事の性質上、孤独感がいっそう強まりやすい傾向がある。こうした人の孤独感は、インターネットの使用により緩和され得ることが、新たな研究から明らかになった。インターネットを通じて他者や社会とのつながりを保つことは、高齢介護者の孤独感やそれが健康に及ぼす悪影響の軽減に役立つ可能性が示されたという。米ニューヨーク大学(NYU)ローリー・マイヤーズ看護学部のXiang Qi氏らによるこの研究結果は、「JMIR Aging」に11月27日掲載された。 本研究の背景情報によると、高齢介護者の約15%が孤独を感じており、認知症患者の介護者は、他の介護者に比べて孤独感を経験する可能性が1.62倍高いという。Qi氏は、「介護は、介護対象者を持ち上げたり手伝ったりすることに起因する慢性的なストレスや不安、痛みなどが心身に大きな負担をかける。実際、多くの介護者は、他人のニーズに気を取られ過ぎて、自分の健康をおろそかにしている」と指摘している。 今回の研究では、2019年から2020年にかけて、カリフォルニア州健康面接調査で収集された65歳以上のインフォーマルな介護者3,957人(平均年齢72.46歳、女性58.6%)のデータを用いて、介護の健康への影響やインターネットの使用頻度と孤独感との関連などが検討された。対象者の孤独感は、UCLA孤独感尺度3項目版により評価された。また、介護が介護者の健康に及ぼす影響については、「介護に伴う責任が原因で身体的または精神的な健康問題を抱えていますか?」という質問により評価した。さらに、インターネットの使用頻度は4段階(1日数回未満の使用、1日数回使用、1日何回も使用、ほぼ常に使用)で評価された。 その結果、475人の対象者(12.0%)が、介護により身体的または精神的な健康問題を抱えていることを報告した。解析の結果、介護関連の健康問題を経験した介護者は、経験しなかった介護者と比較して孤独感のレベルが有意に高かった。一方、インターネットの使用頻度が高いほど、孤独感のレベルは低かった。さらに、インターネットの使用は、介護関連の健康への影響と孤独感との関連を有意に緩和することも示された。 研究グループは、「これらの結果は、テクノロジーが若者の間に孤立を生み出しているという広く共有されている認識に反するものだ」と指摘している。Qi氏は、「インターネットを使って友人や家族、他の介護者とつながることは、実際に介護の精神的負担を軽くしてくれる。家から出られないときでも、人々や情報とつながることができる橋のようなものだと考えてほしい」とNYUのニュースリリースの中で述べている。 ただし、この研究では、介護者がオンラインで何をしていたかまでは把握されていなかった。Qi氏は、今後の研究でこの点を調査する予定だと話している。同氏は、「インターネットでの活動内容が重要な可能性がある。例えば、オンラインゲームは介護者がリラックスして過ごすのに役立つかもしれないが、バーチャルサポートグループへの参加や友人とのビデオチャットなど、他者と交流する活動の方が孤独感を軽減する効果が大きいだろう。私の直感では、社会的な交流やサポートを受ける活動は受動的な活動よりも孤独感を軽減する効果が高い。それを裏付ける研究が必要だ」と述べている。 今回の結果を踏まえて研究グループは、高齢の介護者に対し、他の人と連絡を取り合ったり、サポートを見つけたり、新しいスキルを学んだり、健康問題に関する信頼できる情報にアクセスしたりするために役立つツールとしてインターネットを活用することを奨励している。(HealthDay News 2025年12月9日) https://www.healthday.com/health-news/caregiving/older-caregivers-loneliness-relieved-by-an-unlikely-source-study-reveals Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock