看護師の確保や定着に苦心している病院では、遠隔地にいる看護師がビデオ通話やメッセージング技術を用いて患者を管理するバーチャル看護プログラムの導入が進められている。しかし、こうしたバーチャル看護は、必ずしも十分な効果を示してはいるわけではなく、実際に病棟を回って患者のケアを行っている看護師の負担軽減効果は限定的であることが明らかになった。米ペンシルベニア大学看護学部のK. Jane Muir氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に12月5日掲載された。 論文の筆頭著者であるMuir氏は、「バーチャル看護プログラムは、看護師不足という病院の課題を一気に解決し得る革新的な手段として称賛されてきたが、われわれの研究結果では、臨床現場の看護師の多くは大きなベネフィットを感じていないことが分かった」と述べている。さらに同氏は、「病院はバーチャル看護プログラムの導入に慎重であるべきだ。このプログラムが、対面での看護に代わる安全な選択肢であるというエビデンスは見つかっていない」と付け加えている。 今回の研究では、バーチャル看護プログラムを経験した米国10州の病院勤務の認定看護師880人(平均年齢44.2歳、平均看護経験年数13.3年)を対象に、バーチャル看護により仕事の負担が軽減され、患者ケアの質が向上したのかを評価した。 バーチャル看護として活用した具体的な業務で最も多かったのは、患者の監視(53%)であり、次いで入退院関連業務(45%)、患者教育(37%)などが多かった。57%(483人)の看護師が、「バーチャル看護により業務量は減らなかった」と回答し、10%(81人)は「バーチャル看護により業務量がむしろ増えた」と回答した。また、43%(366人)の看護師がバーチャル看護により業務量が減ったと回答したが、その中で「業務量が大いに減った」と回答したのはわずか8%(70人)にとどまっていた。 一方、患者ケアに関しては、53%(452人)の看護師がケアの質の向上を報告した。しかし、ケアの質が「大いに向上した」と回答したのはわずか11%(96人)のみであった。さらに、バーチャル看護は患者ケアの質に影響なしと回答した47%(391人)の看護師のうち、4%(34人)は「むしろ質が低下した」と回答した。 論文の上席著者で、ペンシルベニア大学看護学および医療政策分野のKaren Lasater氏は、「バーチャル看護プログラムが看護師の負担軽減や患者ケアの質の向上に役立っているかについては結果が一貫していない。安全性や有効性、プログラムが効果を発揮する条件に関する強いエビデンスがない現状でプログラムの導入を検討する病院は、慎重に進めるべきだ」と述べている。 さらにLasater氏は、「バーチャル看護プログラムの価値に関するエビデンスに一貫性はない一方で、より多くの看護師を病院に配置することが、患者と看護師双方にとってより良い転帰につながるという強いエビデンスは存在する」とニュースリリースの中で強調している。(HealthDay News 2025年12月12日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/virtual-nursing-doesnt-deliver-hospital-nurses-say Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Monkey Business Images/Adobe Stock