最先端のがん治療薬は常に臨床試験で有効性や安全性が検証されており、試験参加者の命を救ったり生存期間を延ばしたりする可能性がある。それにもかかわらず、多くのがん患者がこうした治験に参加しない理由は何なのか。その答えはお金であることを示した研究結果が報告された。がん治療薬に関する臨床試験への参加と最も強く関連する因子は、人種や患者背景ではなく経済的要因であることが示されたという。米ワイル・コーネル医科大学およびヒューストン・メソジスト病院のWeichuan Dong氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Comprehensive Cancer Network」に12月17日掲載された。 Dong氏は、「臨床試験は患者の命を救うが、経済的障壁によって多くの患者が治験に参加できずにいる。交通費、育児費用、失われる賃金といった治験に参加することで生じる現実的な負担に対処することで、臨床試験はより公平になり、がん医療の進歩を全ての人が享受できるようになる」とニュースリリースで述べている。 研究グループによると、がん患者のうち、臨床試験に参加するのは約5人に1人に過ぎないという。この低い参加率は、多くの患者が命を救う可能性がある治療を受ける機会を逃すだけでなく、画期的な治療法が米食品医薬品局(FDA)の承認を受け、患者に届くまでの時間が長くなることも意味する。 今回の研究では、オハイオ州北東部の病院で、2018年から2021年の間にがんと診断され治療を受けた1万2,630人の患者(18〜75歳)の電子医療記録が分析された。これらの患者の中で、がん治療の臨床試験に参加していたのは5.1%(649人)のみであった。 治験参加と有意に関連する因子を解析した結果、最も強い因子は、患者本人と同居家族および親族の収入や資産に関連する因子であり、人種・民族、大学進学歴、最寄りの親族との距離の影響は小さいことが明らかになった。次に各因子と治験参加との関連を評価した結果、非ヒスパニック系の黒人患者は非ヒスパニック系の白人患者に比べて、治験に参加するオッズが約30%低いことが示されたが(オッズ比0.70、95%信頼区間0.54〜0.89)、所得を考慮すると、この差は統計学的に有意ではなくなった。さらに、所得が高いほど治験参加のオッズは高く、最も高い所得層では最も低い所得層に比べて67%高かった(同1.67、1.30〜2.16)。一方、メディケイド加入者は、民間保険加入者に比べて治験に参加するオッズが29%低かった(同0.71、0.53〜0.93)。 研究グループは、交通費や宿泊費の補償、治療期間中の逸失賃金の補填、育児支援の提供、交通費補助券の提供などの患者の経済的現実に対応することで、治験参加率は向上し得ると指摘している。論文の上席著者である米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部のRichard Hoehn氏は、「多くの患者にとって、治験参加の可否は物流面とお金の問題に尽きる。こうした課題に対処することは、臨床試験をより包括的にするための、最も直接的な方法の一つである」と述べている。 研究グループは現在、この研究をオハイオ州内の他の医療機関やネットワークにも拡大している。Dong氏は、「2026年初頭に発表予定の大規模研究では、がん患者における臨床試験参加の状況を初めて包括的に可視化し、命を救う可能性のある治療へのアクセスを阻む構造的障壁を明らかにするだろう。われわれは、都市部、郊外、農村部を横断して、地理的・構造的障壁がアクセスにどのように影響しているかを理解するため、『治験砂漠』のマッピングに取り組んでいるところだ」と述べている。(HealthDay News 2025年12月23日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/one-roadblock-keeps-most-cancer-patients-from-joining-clinical-trials-experts-say Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock