頭部への強い打撃は、自殺リスクを大幅に高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。頭部外傷を経験した人は、経験していない人に比べて自殺企図を抱くリスクが21%高いことが明らかになったという。英バーミンガム大学疫学およびリアルワールドエビデンス分野のNicola Adderley氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」1月27日号に掲載された。 論文の責任著者であるAdderley氏は、「この研究結果は、頭部外傷の影響が身体的な症状や後遺症にとどまらないことを示している。頭部外傷は、心理面にも深刻な影響を及ぼす可能性があるのだ。患者の転帰を改善し、安全を確保するためには、精神疾患の既往にかかわらず、最近、頭部外傷を負った全ての人に対し、自殺リスクの評価を検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、英国の入院データおよび死亡統計データとリンクさせたプライマリケアの20年に及ぶデータを用いて、頭部外傷歴のある患者とない患者との間で、自殺企図(自殺による死亡も含む)リスクや自殺企図および自殺による死亡のリスク因子を比較した。頭部外傷歴のある患者38万9,523人に対し、年齢、性別、居住地域を一致させた頭部外傷歴のない患者を1人につき4人選定し(計148万9,675人)、解析に含めた。 対象者のうち、頭部外傷歴のある患者では5,107件(1,000人年当たり2.4件)、ない患者では9,815件(同1.6件)に自殺企図の記録が残されており、頭部外傷歴のある患者では自殺企図のリスクが21%高いことが示された(ハザード比1.21、95%信頼区間1.17〜1.25)。特に自殺企図のリスクが高かった因子は、頭部外傷後12カ月以内、社会的剥奪の程度の高さ、精神疾患の既往であった。12カ月を過ぎるとリスクは時間とともに低下したが、それでも頭部外傷歴のない人と比べると依然として高い状態が続いていた。一方、自殺による死亡のリスクについては、頭部外傷歴のある患者で有意な上昇は認められなかった。このことから、頭部外傷は致死的ではない自殺企図の増加に関与している可能性が示唆された。 研究グループは、「本研究結果は、全体的には、頭部外傷歴のある患者では回復期において、より多くの精神的支援を必要としていることを示唆している」と述べている。論文の上席著者である英バーミンガム大学疫学分野のNeil Thomas氏は、「これらの結果は、臨床実践と医療政策の双方に重要な示唆を与えるものであり、的を絞ったメンタルヘルスおよびウェルビーイング支援が急務であることを浮き彫りにしている。特に、精神疾患の既往に関係なく、頭部外傷後最初の12カ月間を中心に、自殺リスクを評価し、予防戦略を立てる方法の開発とその検証を進めるべきである」とニュースリリースで述べている。 なお、本論文の付随論評では、頭部外傷と自殺リスクの関連には、情動調整や意思決定に重要な脳構造の損傷が関与している可能性が指摘されている。これらの領域の損傷は、衝動性や抑制の欠如、判断力の低下を引き起こし、自傷行為のハードルを下げる可能性があるという。(HealthDay News 2025年12月30日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/head-injuries-linked-to-suicide-risk-researchers-say Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock