犬のしつけの基本の一つは、「おすわり」「ふせ」「待て」などの特定の言葉を理解し、それに反応できるように教えることだ。しかし、とりわけ賢い一部の犬は、人間同士の会話に「聞き耳を立てて」学習できることが、新たな研究で明らかにされた。こうした犬は、「Gifted Word Learners(GWL;語彙学習能力に優れた犬)」と呼ばれている。エトヴェシュ・ロラーンド大学(ハンガリー)のShany Dror氏らによるこの研究結果は、「Science」に1月8日掲載された。 研究グループによると、これらの犬が単語を学習する能力は、生後1歳半前後の幼児が他の人の会話を聞いて新しい言葉を覚える能力とよく似ているという。Dror氏は、「われわれの研究結果は、立ち聞きした話から単語を学ぶことを可能にする社会的・認知的プロセスが、人間に特有のものではないことを示している。適切な条件下では、一部の犬は幼児と似た行動を示すのだ」と述べている。 この研究では、GWLに該当する10匹の犬を対象に、2つの状況で実験が行われた。1つ目の状況では、飼い主が犬に新しいおもちゃを見せ、犬と1分間やり取りをしながらそのおもちゃの名前を提示した。その後は、名前を言わずに3分間遊んでから、犬に自由に遊ばせた(20分未満)。この手順を1日に2回、休息日を挟みながら合計4日間行った。2つ目の状況では、飼い主は、犬には一切話しかけることなく、別の人とおもちゃの名前を含む会話を1分間行い、それを犬が見ているようにした。その後は1つ目の状況と同じ遊びを行わせた。それぞれの状況でおもちゃは2種類使用し、犬が1つのおもちゃの名前を耳にする時間は合計8分間だった。その後、12日目に、犬が学習したおもちゃの名前を理解しているかを確認するテストを行った。具体的には、別室におもちゃを置き、「テディを持ってきて」のように指示を出し、正確に持って来ることができるかがテストされた。その結果、犬は、直接教えられた場合とほぼ同程度に、立ち聞きした会話からもおもちゃの名前を学習していたことが示された。 第2の実験では、さらに興味深い結果が得られた。この実験では、飼い主がおもちゃを犬に1分間見せた後、それをバケツの中に入れ、犬に見えないようにした上でバケツと犬の目を交互に見ながら「これは○○、これがほしい?」と話しかけた。この課題は、犬が自分の目の前にないものの名前を覚えなければならないという点でより難易度が高かったが、多くの犬が正しくおもちゃの名前を学習し、指示されると適切な物を持って来ることに成功した。 論文の上席著者であるエトヴェシュ・ロラーンド大学のClaudia Fugazza氏は、「これらの結果は、GWL犬が新しい物体の名前を学習する際に、複数の異なるメカニズムを柔軟に使えることを示唆している」と述べている。研究グループは、この研究結果は、立ち聞きから学習する能力が、人間の言語に固有のものではなく、種を超えて共有されているメカニズムに依存している可能性があることを示唆しているとの見方を示している。 Dror氏らによると、GWL犬は極めてまれであるという。2021年の先行研究で同氏らは、おもちゃの名前を覚えている犬を世界中で探したが、見つかったのはわずか6ったという。「これらの犬は、人類が言語を発達させることを可能にした認知能力の一部を探るための、極めて貴重なモデルだ。しかし、全ての犬がこのように学習できると言っているわけではない。むしろそれができる犬はまれだ」と述べている。 なお、本研究は、「ジーニアス・ドッグ・チャレンジ(Genius Dog Challenge)」と呼ばれる研究プロジェクトの一環として実施された。このプロジェクトは、GWL犬の特異な能力を理解することを目的としている。(HealthDay News 2026年1月9日) https://www.healthday.com/health-news/pets/gifted-dogs-can-learn-words-by-eavesdropping-on-family-conversations-experiments-show Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Andriy_Medvediuk/Adobe Stock