喘息における気道の炎症は、主に気道が刺激された際に白血球が放出するシステイニイルロイコトリエン(CysLT)により引き起こされると考えられてきた。そのため、多くの喘息治療薬は、その作用を阻害するよう設計されている。しかし新たな研究で、炎症を引き起こしているのは、CysLTと構造は似ているものの、全く異なる経路で産生される擬似ロイコトリエンである可能性が示された。研究グループは、この発見が今後の治療法を変える可能性があるとの見方を示している。米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受け、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のRobert Salomon氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」1月号に掲載された。 Salomon氏は、「われわれは以前、構造は似ているものの、体内で全く異なる化学経路を通じて作られる分子を発見していた。『擬似ロイコトリエン』と名付けたこれらの分子こそ、喘息を引き起こす炎症カスケードの主役である可能性があると考えている」と述べている。 研究グループは過去(2023年)の研究で、擬似ロイコトリエンは、CysLTとは全く異なる仕組みで作られることを明らかにしていた。酵素で作られるCysLTとは異なり、擬似ロイコトリエンは活性酸素種、特にフリーラジカルが脂質に酸素を付加する(酸化)ことで生成される。フリーラジカルは非常に反応性が高く、制御されないまま放置すると有害となり得る。Salomon氏は、「フリーラジカルの働きは、いわば爆発や火事のようなものだ。酸素が燃料と反応すると炎が出るのと同じで、簡単に制御不能に陥る」と言う。 今回、Salomon氏らは、喘息患者では擬似ロイコトリエンの量が増加しており、それらが気道の上皮細胞でCysLT受容体依存性の炎症シグナルを誘導しているとの仮説を立てた。その上で、ヒト尿検体およびダニアレルゲンに曝露させたマウスの肺組織を用いて擬似ロイコトリエンの量を測定するとともに、ヒト気道上皮細胞上での擬似ロイコトリエンとCysLTによる炎症シグナルの誘導作用を比較した。尿検体は、18〜79歳の35人(健康な対照5人、中等度喘息患者と重度喘息患者がそれぞれ15人ずつ)から採取された。 その結果、重度喘息患者では健康な対照と比較して、擬似ロイコトリエンが4〜5倍増加しており、その濃度が高いほど疾患の重症度も高くなることが明らかになった。また、マウスの肺でも、アレルゲン曝露後には擬似ロイコトリエンの量が2倍に増加した。さらに、擬似ロイコトリエンは実際に気道上皮細胞で炎症シグナルを引き起こすが、この反応はロイコトリエン受容体拮抗薬によって抑制されることも示された。 研究グループは、喘息患者は、通常、フリーラジカルの作用を抑えるはずの酵素や抗酸化物質が少ない可能性があると考えている。CysLTと擬似ロイコトリエンは、どちらも同じ受容体を活性化し炎症を引き起こす点では共通している。その結果、気道が狭まり、呼吸が苦しくなる。現在使われている喘息治療薬は、この受容体をブロックすることで作用する。しかし、研究グループは、将来的には、フリーラジカルそのものの働きを抑えることをターゲットにする治療薬が開発される可能性があると考えている。Salomon氏は、「今回の発見の本当の重要性は、受容体を遮断するのではなく、フリーラジカルによる脂質酸化を抑制し、擬似ロイコトリエンの産生を制御する薬によって喘息を治療できる可能性があるという点だ」と述べている。 次の段階の研究でSalomon氏らは、擬似ロイコトリエンがRSウイルス感染症、乳児の細気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、他の呼吸器疾患にも関わっているかどうかを調べる予定だとしている。(HealthDay News 2026年1月28日) https://www.healthday.com/health-news/asthma/new-discovery-could-change-how-asthma-is-treated-scientists-say Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock