脳卒中後に障害が残った患者の回復を促す可能性のある治療法として、脳を刺激する電磁パルスが役立つ可能性があることを示した研究結果が発表された。脳の特定の回路を電磁パルスで刺激する、電磁ネットワーク標的フィールド療法(ENTF〔electromagnetic network-targeted field〕療法)と呼ばれるこの治療法を理学療法と併用したところ、3分の1以上の患者で障害が大きく軽減したという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医科大学のJeffrey Saver氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)主催の国際脳卒中学会議(ISC 2026、2月4〜6日、米ニューオーリンズ)で発表された。 ENTF療法は、運動機能や認知機能など、さまざまな活動に関わる脳のネットワークを刺激する。Saver氏によると、脳卒中後には、これらの神経ネットワークが電気的に乱れた状態になる。ENTF療法はその神経ネットワークに刺激を与えることで、脳の修復や再編成を促す仕組みだという。 今回の研究では、ENTF療法に関する二つの臨床試験のデータを統合解析し、脳梗塞後の障害に対するこの治療法の効果を検討した。両試験で使用されたのは、イスラエルのBrainQ Technologies社が開発したQ Therapeutic Systemと呼ばれる実験的な装置である。この装置は、頭にかぶるキャップと輪状のフレームで構成されており、健康な中枢神経系が生み出すのと似た低レベルの電磁パルスを発することで、脳卒中でダメージを受けた脳の回復を促すことを狙っている。なお、同社は両試験のいずれにも資金を提供している。 試験には、脳梗塞発症から平均14日が経過した、いずれも中等度から重度の障害を有する計124人(平均年齢58歳、女性31%)の患者が参加した。参加者のうち65人はENTF療法を受ける群、59人はプラセボとして偽の治療を受ける群に割り付けられ、8〜12週間にわたり、40〜45回のENTF療法または偽治療を受け、その間に理学療法も受けた。治療は病院で開始され、後半は自宅でポータブルキットを用いて継続した。 その結果、3カ月後の評価で障害がないと判定された参加者の割合は、ENTF療法群で33.8%であったのに対し、偽治療群で11.9%にとどまった。また、ENTF療法群では、全ての患者で障害のレベルに改善が確認された。さらに、ENTF療法による重大な副作用は報告されなかった。 Saver氏は、「患者の転帰を十分に改善するためには、より効果的なリハビリテーション治療が必要なことは明らかだ。その候補として有望なENTF療法は、自宅で携帯型キットを使って実施できる点が特徴だ」と述べている。 一方、本研究には関与していない、米国脳卒中学会(ASA)の広報を担当するJoseph Broderick氏は、「今回の結果はまだ予備的なものであり、治療効果を評価するには、参加者の人数や条件などのバランスが取れた大規模試験が不可欠だ。ENTF療法には安全性の問題が認められず、脳卒中後の新たな回復手段へのニーズも高い」とコメントしている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年1月29日) https://www.healthday.com/health-news/stroke/electromagnetic-pulses-aid-stroke-recovery-trial-results-indicate Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock