コレステロールを低下させるスタチン系薬(以下、スタチン)のパッケージには、起こり得る副作用が列挙された驚くほど長いリストが記載されている。しかし、恐れる必要はない。新たなエビデンスレビューにより、スタチンの使用はパッケージの警告欄に記載されている記憶障害や認知機能障害、うつ病、睡眠障害、勃起不全、体重増加、吐き気、倦怠感、頭痛などの症状の意味のある増加をもたらしてはいないことが明らかになったからだ。英オックスフォード大学ポピュレーションヘルス准教授のChristina Reith氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet」に2月14日掲載された。 Reith氏は、「スタチンは過去30年にわたって何億人もの命を救ってきた。しかし、その安全性に対する懸念が、心筋梗塞や脳卒中による重度の障害や死亡のリスクがある人のスタチン使用を阻んできた。われわれの研究から、ほとんどの人において、スタチンのベネフィットはその副作用のリスクを大きく上回るという安心材料を得ることができた」とニュースリリースの中で述べている。 Reith氏らは今回、過去に実施された23件の大規模なスタチンの臨床試験のデータを収集して解析した。このうち19件は、合計12万3,940人を対象にスタチンとプラセボを比較した試験で、残る4件は合計3万724人を対象にスタチンの低用量と高用量を比較した試験だった。 その結果、スタチン使用群とプラセボ使用群の間で、添付文書に記載されている66種類の副作用のうちの62種類については、FDR(偽発見率)調整後でも、リスク差は有意ではなかった。例えば、記憶障害や認知機能障害を報告した人の割合は、スタチン使用群、プラセボ使用群のいずれも0.2%だった。また、スタチン使用群では、トランスアミナーゼの上昇、およびALP、γ-GTなどのその他の肝機能検査値が異常になるリスクが有意に増加したが、いずれも年間の絶対リスク増加はわずか0.09%、0.05%にとどまっていた。さらに、尿組成の変化と浮腫についてもリスク増加が認められたが、いずれも年間の絶対リスク増加は0.03%、0.07%にとどまっていた。一方、低用量と高用量のスタチン治療を比較した4件の試験の解析では、トランスアミナーゼの上昇およびその他の肝機能異常については高用量群で有意なリスク増加が認められたが、尿組成と浮腫については両群間に有意差は認められなかった。このため、「本当にこうしたリスクがあるのかについては疑問が残る」と研究グループは述べている。 共著者の1人であるオックスフォード大学医学・疫学の名誉教授であるRory Collins氏は、「スタチンの製品ラベルには、主に非ランダム化比較試験から得られた情報に基づき、治療に関連して起こり得る影響として特定の有害事象が列挙されているが、これらの研究はバイアスの影響を受けている可能性がある」と指摘している。その上で同氏は、「スタチンが添付文書に記載されている副作用の大半を引き起こさないことが明らかになった今、患者と医師がこの情報に基づき、より良い医療上の意思決定を行えるよう、スタチンに関する情報の迅速な改訂が必要である」と主張している。 研究グループは以前の研究で、スタチン使用者の約1%で治療開始から1年間にスタチンを原因とする筋肉痛が見られたことを明らかにしている。また、スタチンは血糖値をわずかに上昇させることがあるが、こうした上昇が顕著に見られるのは、主に糖尿病リスクが高い人であると研究グループは説明している。 今回報告されたレビューには関与していない英国心臓財団(BHF)のチーフ・サイエンティフィック・アンド・メディカル・オフィサーのBryan Williams氏は、「この結果は極めて重要であり、患者に信頼できるエビデンスに基づいた安心材料を示した」とニュースリリースの中で述べている。(HealthDay News 2026年2月9日)