人工知能(AI)搭載聴診器は、医師が心臓弁膜症(VHD)の兆候を検出する能力を約2倍に高めることが、新たな研究で示された。米カリフォルニア州の医療テクノロジー企業であるEko Health社で医療業務シニアマネージャーを務めるRosalie McDonough氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal-Digital Health」に2月5日掲載された。 McDonough氏は、「AI搭載聴診器は、実臨床において、従来の聴診器よりも中等度から重度のVHDを持つ患者を見つける能力が格段に高いことを示した。この技術により、患者に対する心エコー検査がより早く実施され、VHDが確認された場合には迅速に治療が開始されることが期待されている。集団レベルで見ると、この技術は入院を減らし、医療費全体の削減につながる可能性がある」とニュースリリースで述べている。 医師は通常、聴診器を使って心臓の音を聞き、異常がないか確認する。心雑音はそうした異常音の一つで、心拍中に血流の乱れによって生じる「ザーッ」や「シュッ」のような音として聴こえる。心雑音は、VHDの所見の一つとされている。 今回の研究では、心臓病のリスクがある50歳以上の357人を対象に、AI搭載聴診器を用いることで、従来の聴診器と比べてプライマリケア医によるVHDの検出率が向上するかどうかが検討された。AI搭載聴診器は、心臓の音を録音し、AIがVHDに関連する音のパターンを解析する仕組みである。参加者は、プライマリケア医による従来の聴診器を用いた標準的な診察と、訓練を受けた研究コーディネーターによるAI搭載聴診器での診察の両方を受けた。心雑音が確認された患者は、心エコー検査によるVHDの有無が確認された。 その結果、心雑音検出の感度は、AI搭載聴診器の方が従来の聴診器に比べて有意に高かった(92.3%対46.2%、P=0.01)。このことから、AI搭載聴診器を使うことで、医師が患者の心臓の音をより正確に聴取し、VHDの見逃しが減ることが示唆された。一方、特異度は従来の聴診器の方が優れていた(86.9%対95.6%、P<0.001)。 McDonough氏は、「AIの活用は、耳だけでは確実に検出することが難しい異常音を明確にする、新たな解析的視点を提供する。しかし、この技術が医師に取って代わるわけではない。このデバイスを使いこなすには医師自身の臨床判断が必要だ」と述べている。 研究グループは、検出率向上以外の利点も挙げている。この点についてMcDonough氏は、「AI搭載聴診器で診察を受けた患者は、診察中の関与度が高まったように見えた。これは、医師がどのような音や所見に反応しているかを患者自身が見たり聞いたりできたためであり、治療のフォローアップへの信頼や関与が高まった可能性がある」と述べている。 ただし、研究グループは、さまざまな臨床環境やより多様な患者群における性能を検証するために、さらなる研究が必要だとしている。McDonough氏は、「この研究は、AIが従来の臨床ツールを実用的かつ責任ある方法で強化できるという、増え続けているエビデンスに加わるものだ。AIは医療従事者に取って代わるものではない。AIが提供するのは、患者の評価において、より自信を持つためのツールなのだ」と述べている。(HealthDay News 2026年2月9日)