脳がいつ衰え始めるのかが正確に分かるとしたらどうだろう。まるで近未来映画のストーリーのようだが、新たに開発された「生物学的時計」によって、それが現実になるかもしれない。米ワシントン大学医学部のKellen Petersen氏らが、p-tau217(リン酸化タウ217)と呼ばれるタンパク質に焦点を当てた血液検査により、アルツハイマー病(AD)の症状が現れ始める時期をわずか3.0~3.7年の誤差で予測できたとする研究結果を発表した。p-tau217は、ADで生じるタウタンパク質の異常(凝集体の形成)を反映する指標であり、その上昇はアミロイドβの蓄積とも密接に関連している。この研究の詳細は、「Nature Medicine」に2月19日掲載された。 研究グループによると、本研究では、脳内での有害なタンパク質の蓄積は、驚くほど一定で予測可能なスケジュールに従って進むことが示された。Petersen氏は、「アミロイドβとタウタンパク質のレベルは、まるで木の年輪のようなものだ。年輪を数えれば木が何歳か分かるのと同じように、これらのタンパク質も一貫したパターンで蓄積していき、値が陽性になる年齢が分かれば、その人がいつADの症状を発症するかを高い精度で予測できる」と話している。 研究グループは、独立した2つの高齢者コホート(Knight ADRCコホート258人、ADNIコホート345人)から得たデータを用いて、p-tau217の増加パターンから生物学的時計を新たに構築し、血液中のp-tau217値を測定することでAD症状の発現時期を予測できるかを検討した。 その結果、血漿中のp-tau217のパーセンテージ値(%p-tau217)が陽性(>4.06%)となる推定年齢から、AD症状の発現時期を平均3.0〜3.7年の誤差で予測し得ることが示された。また、p-tau217が陽性となってからAD症状が現れるまでの期間は、高齢になるほど短いことも示唆された。例えば、60歳で陽性となった人は、AD症状の発現まで約20年かかる可能性がある一方で、同じ陽性でも80歳の人の場合は、症状発現までわずか11年と推定された。 現在、ADリスクを特定するには高額な脳画像検査や侵襲的な脳脊髄液検査を要することが多い。それに対し、この血液検査はより迅速で、安価かつアクセスしやすい代替手段となる可能性を秘めており、医療や研究のアプローチを大きく変える可能性もある。 この検査は、現在は主に、研究の場で使用されている。研究グループは、開発した予測モデルの詳細と、他の研究者が探索・改良できるウェブアプリケーションも公開している。論文の上席著者であるワシントン大学医学部のSuzanne Schindler氏は、「短期的には、これらの予測モデルは、研究や臨床試験を加速させるだろう。最終的な目標は、個々の患者に、症状がいつ発現するかを伝えられるようにすることだ。そうすることで、患者や医師が症状を防いだり遅らせたりするための計画を立てられるようになる」と述べている。 なお、本研究には、AbbVie社、アルツハイマー病協会、アルツハイマー創薬財団(ADDF)の研究プログラムであるDiagnostics Accelerator、Biogen社、Janssen Research & Development社、武田薬品工業株式会社などが資金提供を行った。(HealthDay News 2026年2月20日) https://www.healthday.com/health-news/neurology/blood-test-estimates-when-alzheimers-symptoms-will-start Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock