前立腺がんの手術後には、がんの再発リスクを下げるために放射線治療とホルモン療法を併用することが多い。しかし、新たな研究で、手術後のPSA(前立腺特異抗原)値が検出可能であるものの極めて低い男性では、ホルモン療法を安全に省略できる可能性が示唆された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学放射線腫瘍学分野のAmar Kishan氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に2月26日掲載された。 Kishan氏は、「術後のPSA値が低値にとどまっている大半の男性では、術後の放射線治療だけで非常に高い効果を得られることが、今回の研究で示された。こうした患者では、ホルモン療法を安全に省略できる可能性があり、延命効果が明確ではないのに生活の質(QOL)に大きな影響を与えかねない数カ月にわたる治療を回避できるかもしれない」とニュースリリースで述べている。 前立腺がん患者に対するホルモン療法は、テストステロンの産生を抑えることを目的とした治療である。テストステロンは男性ホルモンとも呼ばれ、一部の前立腺がんの増殖を促す働きを持つ。Kishan氏は、「前立腺が残存している男性では、放射線治療にホルモン療法を併用することで治療成績が改善することが示されている。しかし、すでに手術を受けた男性が術後に放射線治療を受ける場合にも同様の利益を得られるのかについては、明確になっていなかった」と説明する。研究グループによると、ホルモン療法は、重度の疲労、ほてり、性機能障害、体重増加、骨量減少、心臓病リスクの上昇など大きな副作用も伴う。 今回の研究では、6件のランダム化比較試験に参加した男性6,057人のデータ(追跡期間の中央値9.0年)を用いて、根治的前立腺摘除術後に放射線治療のみを受けた場合と、放射線治療に短期(4〜6カ月)または長期(24カ月)にわたるホルモン療法を併用した場合で、全生存率を比較した。 その結果、10年生存率は、放射線治療単独群で83.6%、ホルモン療法併用群で84.3%であり、ホルモン療法の追加による生存率の明らかな延長は確認されなかった。ホルモン療法の期間別に検討しても、短期と長期のホルモン療法の間に有意な差は認められなかった。ただし、長期のホルモン療法により転移リスクはわずかに低下する傾向が認められた。一方、PSA値別に見ると、PSA値が低い(0.5ng/mL以下)男性では、ホルモン療法を追加しても生存率の改善は認められなかったが、PSA値が高い(0.51以上)男性では、長期のホルモン療法による生存率の改善が示唆された。 Kishan氏は、「われわれの目標は、常に、がんを治療しながら患者への害を最小限に抑えることだ。今回の研究は、前立腺がん患者に対するより個別化された医療へとわれわれを一歩近づけるものだ。ホルモン療法の恩恵を真に受ける患者をより正確に見極めることで、治療をより適切なものにし、不必要な介入を減らし、患者の全体的なウェルビーイングの向上に焦点を当てることができるだろう」と話している。(HealthDay News 2026年3月2日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/hormone-therapy-might-be-unnecessary-for-some-prostate-cancer-patients Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock