遠隔診療は単に便利なだけでなく、患者と医療システム双方の医療費削減につながることが、新たな研究で示された。特に頻度の高い症状の診療においては、遠隔診療では対面診療と比べて医療費を約5分の1に抑えられることが明らかになったという。米ペンシルベニア大学戦略的イニシアチブのシニアバイスプレジデントであるDavid Asch氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月9日掲載された。 Asch氏は「この研究を行う前は、遠隔診療は“応急処置”を気軽に受けられる手段の一つに過ぎず、対面診療を先延ばしにするだけで、結果的に全体の医療費を押し上げるのではないかという懸念があった」と説明。その上で、「しかし、われわれの研究から、それが事実ではないことが明らかになった。多くの患者にとって、遠隔診療は応急処置のための一時的な対応となるだけでなく、完全な解決策となり得るのだ」とニュースリリースの中で述べている。 論文の研究背景によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の緊急措置により遠隔診療へのアクセスが拡大し、その利用が急増した。例えば、ペンシルベニア大学ヘルスシステム(UPHS)での遠隔診療の件数は、2020年3月から2021年2月までの1年間で100万件に達し、2019年の1万1,000件から約90倍に増加した。 しかし、遠隔診療の有効性や費用対効果については依然として疑問が残っていたという。論文の上席著者である同大学生物統計学教授のYong Chen氏は、「遠隔診療が万能ではないことは認識している。特に精神および行動の健康問題に対しては、慎重なトリアージやフォローアップ、継続的なケアが依然として重要である。そのため、われわれは、医療資源の効率的な配分が実現されているのかを解明したいと考えた」と述べている。 研究グループは今回、2024年1月1日から4月30日までの4カ月間にわたる16万3,308件の診察データを分析した。データには、対面診療および遠隔診療の両方の診察データが含まれていた。対象はCOVID-19、呼吸器症状、神経発達障害、睡眠障害、不安症など10種類の一般的な症状や疾患の診察とし、初回受診の7日前から30日後まで追跡し、その後の受診の必要性を調べた。 その結果、遠隔診療に関連する請求額は平均で96.60ドル(1ドル158円換算で約1万5,300円)だったのに対し、対面診療では509.21ドル(約8万円)だった。また、その後の受診回数は、遠隔診療で平均3.44回であったのに対し、対面診療では平均4.44回であった。特に呼吸器症状などでは対面診療よりも遠隔診療の方が平均で800ドル(約12万6,400円)以上医療費が少なかった。一方、精神科医療については、対面診療と遠隔診療の医療費はほぼ同額であることが示された。 論文の筆頭著者である同大学応用数学・計算科学のBingyu Zhang氏は、「多くの医療システムでは、すでに精神科医療の大部分を遠隔診療によって提供している。精神科医療は、他の疾患のような検査や処置ではなく、カウンセリングや服薬管理が主体となるからだ。したがって、治療や処方の流れは診療形態にかかわらず同じようなものであり、診療エピソードにかかる費用も同程度になる。ただし、それでも遠隔診療ではその後の受診回数が少ない傾向にある」と説明している。 研究グループはまた、遠隔診療へのアクセスを拡大したコロナ禍の規制を維持するために米議会が対応する必要があると主張している。UPHSのCEOであるKevin Mahoney氏はニュースリリースの中で、「もし遠隔診療がCOVID-19以前のような制限された形に戻れば、今回われわれが明らかにした医療費削減効果は失われる可能性がある」と指摘し、「病院や医療システムが深刻な財政的逆風にさらされている今、このような節減は極めて重要だ。それによって、患者ケアへの再投資やイノベーションの推進が可能になる」と述べている。(HealthDay News 2026年3月2日) https://www.healthday.com/health-news/health-technology/telemedicine-visits-cost-five-times-less-than-in-clinic-care Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock