ワクチン接種率がわずかに低下するだけで、麻疹(はしか)の新規感染者数や入院・死亡数がいずれも7倍以上に増える可能性があるとする報告書がCommon Health Coalitionから発表された。米国で、小児の麻疹、おたふくかぜ、風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)の接種率が年間1%低下するだけで、5年後には年当たり約1万7,000例の麻疹症例と4,000件の入院、36件の死亡につながる可能性があると、報告書は結論付けている。この研究は、査読前論文のオンラインリポジトリ「medRxiv」に2月20日公開された。 報告書によると、この年間1%の接種率低下によって、現在から2030年までの間に米国における麻疹に関連する医療費として年間15億ドル(1ドル159円換算で約2385億円)の追加負担が生じるという。Common Health Coalitionの委員長で医師のDave Chokshi氏はニュースリリースの中で、「ワクチン接種は子どもの健康のためにわれわれができる最も強力な投資の一つだ。しかし、高い接種率を維持できなければ、われわれ自身がその代償を支払うことになる」と述べている。 最近では、サウスカロライナ州、ユタ州、アリゾナ州、テキサス州で大規模な麻疹アウトブレイクが発生し、ワクチン接種の重要性は改めて浮き彫りになっている。米疾病対策センター(CDC)によると、2026年に入ってからこれまでに(3月12日時点)、1,362件の麻疹症例が報告され、14件の新たなアウトブレイクが発生し、その影響は31州に及んでいるという。麻疹は極めて感染力が強く、最大で90%の二次感染率が見込まれる。 米イェール大学公衆衛生大学院の研究グループは今回、米国の郡ごとのMMRワクチン接種率データを用いて、2030年まで0~6歳の接種率が毎年1%下がり、5年後に合計5%低下した場合に何が起こるかを予測した。研究グループは、「現在の傾向を踏まえると、今後5年間でMMRワクチンの接種率が5%低下する可能性は十分に考えられる。実際、2020年以降、最近の政策変更以前の時点ですでに接種率は約2.5~3ポイント低下している。このシナリオでは、全国の接種率は約87.5%にまで下がると予測される。これは、感染力が強い疾患に対して集団免疫を維持するために必要と広く認識されている95%の基準を7.5ポイント下回る水準だ」と指摘している。 このシナリオ通りになった場合、麻疹の年間症例数は2025年の2,181例から1万5,000例以上増えて年間1万7,232例になり、麻疹による入院数は2025年(554件)から3,000件以上増えて年間4,085件に、死亡数は5件から36件になると予測された。また、これらの症例の治療に年間4110万ドル(約65億3490万円)、公衆衛生上の麻疹流行への対応に9億4700万ドル(約1,505億7300万円)が必要になると推定された。さらに、生産性の低下や欠勤による損失も5億1040万ドル(約811億5360万円)に達すると推計された。 論文の上席著者であるイェール大学公衆衛生大学院感染症モデリング分析センター所長のAlison Galvani氏は、「今回の予測は、回避可能なリスクがどれほど急速に増大し得るか、また、高い接種率を維持することでいかに人々の苦痛と経済的負担の双方を回避できるのかを示している」と述べている。 研究グループは、ワクチン接種率を向上させる対策として、1)保険会社がワクチン接種費を全額カバーし、家庭の費用負担が生じないようにすることを確実にする、2)就学時のワクチン接種要件を維持または強化する、3)広報を通じてワクチンに対する人々の信頼を醸成する、4)地域の予防接種連携組織を通じてワクチンへのアクセスを改善する、などを提言している。(HealthDay News 2026年3月9日) https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/small-drop-in-measles-vaccinations-tied-to-big-jump-in-cases Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock