マンモグラフィによる乳がんの定期検診で明らかにできるのは、乳がんの兆候だけではない可能性があるようだ。新たな研究で、マンモグラフィは、女性の最大の死因である心血管疾患(CVD)の兆候を早期段階で検出するのにも役立つ可能性が示唆された。人工知能(AI)を用いてマンモグラフィ画像から測定した、乳房組織の中を通る動脈に蓄積したカルシウム(乳房動脈石灰化〔BAC〕)は、主要心血管イベント(MACE)および死亡の独立した予測因子であることが示唆された。米エモリー大学放射線医学部門教授のHari Trivedi氏らによる研究で、詳細は「European Heart Journal」に3月9日掲載された。 米国では、毎年4000万人以上の女性がマンモグラフィを受けていることから、この研究結果は大きな影響を与える可能性がある。これまで何十年もの間、医師らはマンモグラフィで認められるBACの存在に気付いていた。しかし、この情報が心臓の状態を評価するために活用されることは、最近までほぼなかった。こうした中、AIの登場により、BACはより正確に、かつ大規模に測定できるようになった。 女性の多くは、女性の健康にとって最大の脅威は乳がんだと誤解している。しかし、CVDの方がはるかに多くの女性の命を奪っているのが現状だ。実際、米国心臓協会(AHA)の最近の報告によると、女性のCVD患者数は増加しているが、CVDリスクに対する意識は近年、低下傾向にあるという。こうした問題が、Trivedi氏らによる今回の研究のきっかけの一つとなった。 Trivedi氏らは今回、マンモグラフィ検診を受けた女性を対象に解析を行った。対象は、エモリー・ヘルスケアで検診を受けた女性7万4,124人(内部コホート)と、メイヨー・クリニックで検診を受けた女性4万9,638人(外部コホート)である。両コホートのマンモグラフィ画像から、AIを用いて動脈内のカルシウム沈着を分析し、なし、軽度(0超~10mm2)、中等度(10超~25mm2)、重度(25mm2超)の4段階に分類した。その上で、中央値で7.0年間追跡し、BACによりMACEリスクを予測できるかを検証した。 その結果、BACが認められなかった女性と比べて、BACが軽度、中等度、重度のいずれの群においてもMACEリスクが有意に高く、その関連は量依存的であることが示された。MACEのハザード比は、BACが軽度の女性では、内部コホートで1.32(95%信頼区間1.10~1.59)、外部コホートで1.28(同1.17~1.39)、中等度の女性では1.75(同1.23~2.50)、1.79(同1.55~2.06)、重度の女性では3.29(同2.15~5.05)、2.80(同2.36~3.32)であった。また、BACが1mm²増加するごとに、MACEリスクは2~3%増加した。 専門家らはこの結果について、「マンモグラフィが血圧測定や脂質検査などの従来の心血管疾患スクリーニングに取って代わるべきことを意味するものではない」と説明している。ただ、マンモグラフィによって、CVDの初期兆候を得られる可能性はある。Trivedi氏は、「私は、この技術もこの検査もとても良いものだと思っているが、現時点ではBACのスコアによって治療や管理を変えるべきことを裏付けるエビデンスはない」と述べている。 なお、一部のクリニックでは、すでにBACを検出するAIツールをサービスとして提供しているが、追加料金がかかる場合もある。こうした情報がルーチンで報告されるようになれば、大きなメリットを期待できると医師らは見ている。付随論評の著者で米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のLori Daniels氏は、「放射線科医がBACに関する情報を報告するようになれば、われわれが必要とするデータが蓄積されていく。それが第一歩になる。ここには、これまで見過ごされてきた膨大なデータが存在する。自分の動脈の中で何が起きているのかが可視化されることで腑に落ちて、生活習慣の変容などに対するモチベーションが高まることもある」と述べている。(HealthDay News 2026年3月10日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/mammograms-may-also-reveal-hidden-heart-disease-risk-study-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock