不妊治療を受けても女性のがんリスクは高まらないとする新たな研究結果が報告された。研究によると、medically assisted reproduction(MAR、医療的に補助された生殖)を受けた女性での浸潤がんの罹患率は、一般女性と比べて高くないことが明らかになった。ただし、がんの種類によっては若干の違いが見られ、罹患率がやや高いものと低いものがあったという。ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のビッグデータ健康研究センターのAdrian Walker氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に3月10日掲載された。 Walker氏は、今回の結果は不妊治療を受けている女性にとって安心材料になると述べた上で、「MARを受けた女性は、対象となるがん検診プログラムに引き続き参加するべきだ。また、自分のがんリスクについて医師と相談し、リスクを下げるためにできることを理解することも重要だ」とニュースリリースの中で語った。 今回の研究では、1991年から2018年までの間に生殖補助医療(ART)、排卵刺激および人工授精(IUI/OS)、クロミフェン単独排卵誘発を受けたオーストラリア人女性約41万7,984人の医療記録が解析された。このうち27万4,676人(65.7%、年齢中央値34歳、追跡期間中央値9.42年)はARTを、12万739人(28.9%、年齢中央値34歳、追跡期間中央値11.67年)はIUI/OSを、17万5,510人(42.0%、年齢中央値32歳、追跡期間中央値9.42年)はクロミフェン単独排卵誘発を受けた経験があった。 解析の結果、ART群およびIUI/OS群の浸潤がん全体の罹患率は一般女性とほぼ同等であり、標準化罹患比(SIR)はART群で1.00(95%信頼区間0.98〜1.02)、IUI/OS群で0.99(同0.97〜1.02)であった。クロミフェン単独排卵誘発経験者では、罹患率がわずかに高かった(SIR 1.04、95%信頼区間1.00〜1.07)。がん種別に見ると、子宮がんの罹患率は全ての治療群で一般女性より高く、SIRはART群で1.23、IUI/OSで1.32、クロミフェン単独排卵誘発で1.83であった。さらに、上皮内および浸潤性メラノーマの発生もわずかに高く、SIRは1.07〜1.15の範囲であった。一方、子宮頸がんや気管・気管支・肺のがんの罹患率も低く、SIRは子宮頸がんで0.52〜0.61で、気管・気管支・肺のがんで0.62〜0.70であった。 Walker氏は、「特定の集団で一般集団とは少し異なるがんの発生パターンが見られるのは珍しいことではない。しかし、今回の結果が示すように、それは必ずしも全体的な罹患率の上昇を意味するものではない」と説明している。また、論文の筆頭著者である同研究所のClaire Vajdic氏は、「ほとんどの医療行為は何らかのリスクを伴うものの、今回観察されたがん発生率の増加は非常に小さいものだった」と述べている。 ただし、今回の結果の解釈には注意が必要だと研究グループは強調している。Vajdic氏は、「この研究は、異なる集団間のがん罹患率を比較したものであり、MARとがん発症との因果関係を調べたものではない。そのため、結果を解釈する際には、対象集団がもともと持っているがんリスクも考慮する必要がある」と述べている。 研究グループによると、MARを受けた女性で特定のがんが多く見られた理由には、さまざまな要因が考えられるという。Vajdic氏は、「MARが必要になる女性が有する特徴そのものが、がんの発症に関係している可能性がある」と話す。例えば、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、不妊の原因となる疾患の中には、子宮がんや卵巣がんのリスクを高めることが知られているものもある。さらに、不妊治療を受ける女性には、都市部に住んでいる、経済的に余裕がある、肌の色が明るい、喫煙率が低いなどの特徴があり、これらも今回の研究で認められたがんの発生パターンに影響している可能性も考えられるという。 研究グループは、今回の対象者を今後も追跡し、長期的なデータからさらに詳しい知見を得たいとしている。(HealthDay News 2026年3月13日) https://www.healthday.com/health-news/women-health/fertility-treatments-arent-linked-to-added-cancer-risk-for-women-study-concludes Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock