腸内環境を整えることで関節炎の痛みが和らぐかもしれない──そんな研究結果が報告された。変形性膝関節症(OA)患者を対象としたランダム化比較試験で、難消化性食品成分であるプレバイオティクスの摂取が痛みの軽減に寄与する可能性が示された。英ノッティンガム大学NIHRノッティンガム生物医学研究センターのAfroditi Kouraki氏らによるこの研究は、「Nutrients」に2月24日掲載された。研究グループは、腸の健康を改善することがOAの新しい治療法になる可能性があると考えている。Kouraki氏は、「この研究は、朝食やヨーグルトにサプリメント(以下、サプリ)を加えるだけで、痛みが和らぎ、身体機能も改善される可能性があるという、わくわくするような可能性を示した」とニュースリリースで述べている。腸内には何兆もの細菌が生息し、健康に幅広く影響を与えることが知られている。今回の研究では、チコリの根や菊芋などに含まれる天然食物繊維であるイヌリンに着目し、イヌリンのサプリと理学療法士の指導下で実施される運動プログラム(physiotherapy-supported exercise;PSE)が、OAの痛みにどのような影響を及ぼすのかを評価した。対象とされたOA患者117人(平均年齢67.5±9.4歳、女性58.1%)は、6週間にわたって、1)イヌリンのサプリ(20g/日)を摂取する群、2)イヌリン摂取とPSEを受ける群、3)PSEのみを受ける群、4)プラセボ(マルトデキストリン10g/日)を摂取する群の4群に、ランダムに割り付けられた。その結果、イヌリンと理学療法は、いずれも単独で膝の痛みを軽減する効果のあることが明らかになった。Numerical Rating Scale(NRS)で評価した痛みは、プラセボ群と比較して、イヌリン群で−1.11ポイント(95%信頼区間−2.18〜−0.04、P=0.045)、PSE群で−1.55ポイント(同−2.52〜−0.58、P=0.002)改善した。また、イヌリン群では握力と、痛みに対する感受性(圧痛閾値、時間的荷重〔同じ強さの刺激を短時間で繰り返し受けると、痛みが次第に強く感じられる現象〕)に改善が見られた一方で、PSE群では、30秒立ち上がりテスト(30-CST)とTimed Up and Go(TUG)に改善が認められた。さらに、介入離脱率は、イヌリン群で3.6%だったのに対し、PSE群では21%だった。研究グループは、毎日のサプリ摂取は、定期的な運動よりも継続しやすい可能性があると指摘している。このほか、イヌリン摂取群では、腸から分泌されるホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の血中濃度の上昇と腸で産生される脂肪酸である酪酸レベルの上昇も確認された。GLP-1は、痛みの調節や筋肉の健康に関与しており、新しい肥満症治療薬でも標的とされている。一方、酪酸は全身の炎症や痛みの経路に影響を与えると考えられている。論文の上席著者であるNIHRノッティンガム生物医学研究センターAna Valdes氏は、「GLP-1と握力の関係は特に興味深く、腸-筋肉-痛みの相互作用が関連している可能性を示しており、今後、さらに調査する価値がある」と述べている。本研究には関与していない、Arthritis UKで研究部長を務めるLucy Donaldson氏は、「研究者らは腸内細菌が痛みの感じ方にどのように関与するかを探り始めている。この予備的な研究は、食事と理学療法が異なるメカニズムで関節炎の症状を改善できる可能性を示しており、とても興味深い。バランスの取れた食事、食物繊維の摂取、定期的な運動が大切であることは分かっているが、それらがどのように作用して痛みを軽減するのかを理解するための研究をサポートできることをうれしく思う」とコメントしている。(HealthDay News 2026年3月17日)https://www.healthday.com/health-news/bone-and-joint/prebiotic-eases-arthritis-pain-trial-findsCopyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Elena Zakharova/Adobe Stock