抗菌薬は、危険な感染症を治療する重要な薬として知られている。しかし、新たな研究で、抗菌薬はこれまで考えられていた以上に長期間にわたり身体に影響を残す可能性が示された。約1万5,000人の成人を対象とした研究で、特定の抗菌薬が腸内マイクロバイオームに対して、最長で約8年にわたり影響を及ぼすことが明らかになった。ウプサラ大学(スウェーデン)のGabriel Baldanzi氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に3月11日掲載された。この研究では、スウェーデンの3つの大規模コホート研究のデータを統合して、8年間の抗菌薬の使用歴と腸内マイクロバイオームとの関連を検討した。対象者に処方された抗菌薬は、スウェーデン処方薬レジストリを用いて把握した。対象者の総計は1万4,979人で、過去8年間で1回以上の抗菌薬使用歴があった割合は69.7〜73.7%であった。参加者から便サンプルを採取し、さらに生活習慣や食事に関する詳細なアンケートにも回答してもらった。他の使用薬剤や腸内マイクロバイオームに影響を与える既知の因子を調整した多変量解析の結果、腸内マイクロバイオームの多様性の低下と最も強く関連していたのは抗菌薬の使用後1年未満であったが、1〜4年前および4〜8年前の使用でも関連は有意であった。抗菌薬の種類別に見ると、クリンダマイシン、フルオロキノロン系、フルクロキサシリンは、腸内マイクロバイオームの組成への影響が大きく、菌種の存在量との関連の大部分を占めていた。これらの抗菌薬の4〜8年前の使用は、解析対象菌種の10〜15%で存在量の変化と関連していた。一方、ペニシリンV、広域ペニシリン、ニトロフラントインは、数種類の菌種の変化とのみ関連していた。4〜8年前の1コースの抗菌薬の使用でも、未使用と比較すると、腸内マイクロバイオームの組成の変化と関連していた。論文の筆頭著者であるウプサラ大学のGabriel Baldanzi氏は、「4〜8年前の抗菌薬の使用が、現在の腸内マイクロバイオームの組成と関連していることが分かった。特定の抗菌薬は、1コースの治療でもその痕跡が残る」と述べている。腸内マイクロバイオームのバランスは、人の健康にとって極めて重要である。過去の研究でも、抗菌薬の使用量が多いほど、2型糖尿病、心疾患、肥満、重篤な消化管感染症、さらには大腸がんのリスクが高まることが報告されている。こうした長期的な腸内環境の変化が、その一因ではないかと考えられている。研究を率いたウプサラ大学分子疫学分野のTove Fall氏は、「今回の結果は、同等の効果を持つ抗菌薬が2種類ある場合には、腸内マイクロバイオームへの影響がより小さい方を選択するなど、今後の処方指針に役立つ可能性がある」と述べている。ただし研究グループは、医師に処方された薬の服用を自己判断で中止すべきではないと強調し、「重要なのは、本当に必要な場合に適切な抗菌薬を選択し、長期的に体内の生態系を守ることだ」としている。(HealthDay News 2026年3月19日) https://www.healthday.com/health-news/general-health/gut-microbiome-may-take-years-to-recover-from-antibiotic-use Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock