注意欠如・多動症(ADHD)の子どもに対しては、メチルフェニデートが処方されることが多い。ADHD患者は統合失調症などの精神病(精神病性障害)のリスクが高いことが知られているが、精神病の発症とメチルフェニデートとの長期的な関連は、これまで明確ではなかった。こうした中、新たな大規模研究で、メチルフェニデートは精神病リスクを上昇させず、むしろ小児期の同薬による治療は将来の非感情性精神病性障害に対して予防効果を有する可能性が示唆された。英エディンバラ大学児童・思春期精神医学分野のIan Kelleher氏らによるこの研究は、「JAMA Psychiatry」に3月25日掲載された。Kelleher氏は、「幼少期のメチルフェニデートによる治療が長期的な精神病リスクの低下と関連していたという事実は、この薬剤が小児期の症状を管理するにとどまらず、重篤な精神疾患に対して長期的な保護効果を持つ可能性を示唆している」とニュースリリースで述べている。この研究でKelleher氏らは、フィンランドの全国データを用いて、1987年から1997年の間に出生した人を対象に、子どもおよび思春期の若者に対するメチルフェニデートによる治療が将来の非感情性精神病性障害リスクに与える影響を検討した。同期間に出生したのは69万7,289人であった。このうち3,956人(男子80.41%)が、フィンランドでメチルフェニデートが使用されるようになった2003年1月1日以降に、18歳未満でADHDと診断されており、2,728人(68.96%)がメチルフェニデートの処方を1回以上受けていた。222人(5.7%)が非感情性精神病性障害の診断を受けており、診断時の平均年齢は22.16歳だった。解析の結果、メチルフェニデート(30mg/日)による長期治療と非感情性精神病性障害リスクの間に有意な関連は認められなかった。さらに二次解析では、13歳未満でADHDと診断されメチルフェニデートを処方された人では、成人期における非感情性精神病性障害の発症リスクが低い傾向が示された。思春期にADHDと診断された人では、十分な評価を行うことができなかった。研究グループは、「これらの結果は、ADHD治療で使われる中枢神経系刺激薬が将来的に精神病リスクを高めるのではないかという、近年の保護者や医師、政策担当者の懸念を和らげる一助となる可能性がある」と述べている。Kelleher氏はさらに、「ADHDの子どもを成人期まで追跡すると、ごく一部ではあるが一定数が統合失調症などの精神病性障害を発症することが知られている。重要な疑問は、ADHD治療薬がそのリスクを引き起こしているのか、それとも相関関係はあっても因果関係はないのかという点であった。今回の研究結果は、そのリスクを高めている要因が薬剤そのものではないことを示唆している」と話している。論文の筆頭著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのColm Healy氏は、「小児の脳と、思春期あるいは成人の脳との間には重要な発達上の違いが存在する。そのため、中枢神経系刺激薬の効果が全ての発達段階で同じであると仮定することはできない。成人におけるADHD治療が急増している現状を踏まえると、こうした違いの理解は喫緊の課題である」と述べている。(HealthDay News 2026年3月26日) https://www.healthday.com/health-news/mental-health/ritalin-might-protect-adhd-kids-long-term-mental-health-study-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock