低リスクの非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性では、積極的監視療法と直ちに手術を行った場合とで、浸潤性乳がんの発生率に大きな差は認められない可能性が、新たな臨床試験で示された。積極的監視療法は、治療を行わないことを意味するのではなく、患者の状態を継続的に評価し、必要に応じて適切な治療介入を行える体制で経過を観察する方法である。オランダがん研究所のJelle Wesseling氏らによるこの研究は、第15回欧州乳がん学会(EBCC 15、3月25~27日、スペイン・バルセロナ)で発表された。DCISは、乳管内にがん細胞が認められるが、周囲には広がっていない(非浸潤)状態のがんである。米国立がん研究所(NCI)によると、DCISで見られる乳管内のがん細胞は、将来的に浸潤性乳がんに進行する可能性があるとされる。DCISに対しては通常、手術が行われ、場合によっては放射線療法やホルモン療法なども行われる。しかし、DCISが浸潤性乳がんに進行するのは、5人に1人程度にとどまるという。Wesseling氏は、「数十年もの間、DCISは『乳がんの初期段階』と位置付けられてきたため、ほぼ必ずと言っていいほど、乳がんと同じように治療されてきた。しかし、もしDCISのほとんどが危険な浸潤性乳がんに進行しないのなら、一部の女性は過剰治療を受けているのではないかという大きな疑問が浮かんでくる」と指摘する。今回の臨床試験には、オランダの約60カ所の病院で治療を受けた低リスクDCISの女性1,423人が登録された。試験が2017年に開始された当初、最初の73人の患者は、手術を受ける群と積極的監視療法を受ける群のいずれかにランダムに割り付けられた。その後は、患者自身がいずれかの治療法を選択できるように試験内容が変更され、約4分の3(1,025人)が積極的監視療法、330人が即時手術を選択した。なお、本試験は、浸潤性乳がんの発生が60例に達した時点で中止して中間解析を行う設計となっており、今回の報告はその中間解析の結果である。平均約2年の追跡期間における解析の結果、浸潤性乳がんに進行した患者の割合は、手術群で9%(33/363人)、積極的監視療法群で6%(63/1,060人)だった。また、見つかった腫瘍のサイズは、手術群で平均6mmだったのに対し、積極的監視療法群では平均9mmとやや大きかったが、悪性度に差はなかった。Wesseling氏は、「低リスクのDCISと診断された女性にとって、今回の中間解析の結果は心強いものだ。現時点では、即時手術と比べて積極的監視療法が早期の転帰を悪化させることを示す証拠はない」とニュースリリースで述べている。同氏はさらに、「この結果は、患者と医師が即時手術を選択した場合、DCISに対する過剰治療となる可能性があることを示唆している。ただ、乳がん診療ガイドラインに何らかの変更を加える前に、より長期の追跡とさらなる研究が必要だ」としている。また同氏は、「医師として、私は『害を与えてはならない』という原則に従っている。目標は、女性をリスクにさらすことなく不必要な治療を避けることだ」と強調している。EBCC 15の会長で、ナバラ大学クリニック(スペイン)の乳腺外科学部門長であるIsabel Rubio氏も、Wesseling氏の見解に同意を示し、「追跡期間がより長期であれば、こうした結果は選択された一部の患者に対する治療強度を下げるアプローチを支持するものとなる可能性がある。つまり、慎重なモニタリングを伴う積極的監視療法によって、過剰治療を回避しつつ手術と同程度の転帰をもたらす可能性があることを示している」と述べている。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2026年3月31日) https://www.healthday.com/health-news/cancer/watch-and-wait-approach-safe-for-women-with-precancerous-breast-condition-trial-finds Copyright © 2026 HealthDay. All rights reserved.Photo Credit: Adobe Stock